第3楽章 光へと続く新しい明日を
投稿日:2022年05月16日投稿者:じゅうべい(Jubei)
カテゴリー:第7遊行 光へと続く新しい明日を , 平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
レン、小さいこの子は鴻臚館に来てからというもの、姉と慕うお邑をやさしく介抱しながら過ごすようになっていた。垢で汚れていた顔は、もうすっかりきれいになっている。そこにはもう、〈死穢童子〉と呼ばれていた頃の面影はなくなってい […]
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平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
レン、小さいこの子は鴻臚館に来てからというもの、姉と慕うお邑をやさしく介抱しながら過ごすようになっていた。垢で汚れていた顔は、もうすっかりきれいになっている。そこにはもう、〈死穢童子〉と呼ばれていた頃の面影はなくなってい […]
後編:悲しみを包む子守唄 おかあさん・・・おかあさん・・・・。 闇夜が訪れ眠りにつく頃、レンはよく悪夢にうなされていた。 ねえ起きて・・・・・起きてよ・・・・・・。 幼く小さいその身体を震わせながら。 やだ・・・・やだよ […]
前編:哀しみの童女レン 鬼が出ると噂されている羅城門での生活。初めのうちは私、お邑一人で、いつ終わるとも知れない儚い命とともに、孤独の中を過ごしていました。雨の日も風の日も雪の日も、永遠と思える永さの中で、暗闇の中に身を […]
後編:魂のゆくえ ごめんなさい・・・・。ごめんなさい・・・・・。 よしよし、だいじょうぶ、だいじょうぶ・・・・・だいじょうぶ、だいじょうぶ。 思い切り泣いてすっきりしたのか、お邑は落ち着きを取り戻し、再び自身の身の上を語 […]
中編:DAWN OF DREAMS-夢の夜明け― お父さま・・・・お母さま・・・・・・・。 私、お邑の中で、お父さまとお母さまの幻影が浮かんでは、崩れるように消えてゆく。今はもう、どこにもいなくなってしまった二人を求め、 […]
前編:どんなに闇が深くても、それだけはずっと信じていたい。 羅城門の下で病に苦しんでいた女とその妹のレン。そして大きな白い犬の小太郎。彼女たちは私、空也と善友の蓮性に連れられて、共に鴻臚館で過ごす日々を送ることとなった。 […]
「さあ、着きましたぞ」 「うわあ、おっきい」 澄み渡った青空の下、レンがその高大な建物を見て、感歎の声を漏らしている。 それは、七条大路に面して南に門をどんと構えて、やって来る者を盛大に迎えてくれている。 そしてその門を […]
「空也様」 レンといっしょに女を介抱し終わってからしばらくすると、羅城門に一人の僧がやってきた。背丈は五尺五寸(一六五センチ)くらいで逞しい筋骨を身体に具えおり、物を運ぶための荷車を引いている。 「おお、待っていたぞ蓮性 […]
後編:阿弥陀仏様の子守唄 「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」 私、空也はレンを抱きしめながら、レンの頭を撫でながら、口に任せて阿弥陀念仏を称え始めていた。 「南無阿弥陀仏、阿弥陀念仏。南無阿弥陀仏、阿弥 […]
前編:ありがとう。どういたしまして。 「さあ、これを」 羅城門に戻ってきた私、空也はゆっくりと女の身を起こし、干魚を手で小さくむしって、箸で飯箱に入った白飯を口に運んでやった。女はゆっくりと口をあけてご飯を口に入れ、次い […]
「小太郎!」 羅城門の階段を上がった東の隅に、白い大きな犬が座っている。その犬が幼い童女、レンに気づくと、立ちあがって尻尾を振りながら走ってきた。 レンは嬉しそうに駆け寄ると、笑顔で白い犬の頭を撫でてやる。 「ただいま、 […]
後編:笑顔の出会い 「おねえちゃんが?」 それは、東市で出会った童女が口にした言葉だった。市に来たこの子が鄽(いちくら=お店)から干魚を盗んで捕まりそうになっていたのを、私が助けたのだ。また、この子はその汚い身なりと、今 […]
前編:人々の、いのちを守る羅城門(らいせいもん) 「空也さま、はやくはやく」 晴れ渡った空の下、幼い童女に手をひかれ、私はいっしょに駆けだしている。 「こっちだよ」 その表情に、満面の笑みを浮かべながら。 と、童女は走る […]
後編:菩薩としてただひたすらに 南無とは信じ委ねること。 南無阿弥陀仏とは、限りない弥陀の光の中にその身を委ねて生きること。 それが阿弥陀念仏の本当の意味なのだよ。 私、空也の話を黙って聞いていた権三は腕を組み、またしば […]
前編:「南無阿弥陀仏」の真実 「南無阿弥陀仏の念仏とは、そなたが私を生かしてくれていることへの感謝の言葉でもあるのだ」 これを聞いた権三は首をかしげてしばらく考えているが、どうにも分からないという顔をしている。 「権三ど […]
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