後半:悲しみを包む子守唄

おかあさん・・・おかあさん・・・・。

闇夜が訪れ眠りにつく頃、レンはよく悪夢にうなされていた。

ねえ起きて・・・・・起きてよ・・・・・・。

幼く小さいその身体を震わせながら。

やだ・・・・やだよ・・・・起きてよ。

苦痛に顔をゆがめながら。

おかあさん、おかあさん・・・・。

彼女は今日も求め続ける。

お願い、私をおいて・・・・いかないで。

この子は今日も、闇の中でもう戻っては来ない光を求めて泣いている。小さな叫びを上げながら、小さな体を震わせながら、顔をゆがめて哀しみの中で泣いている。そんな時、私、お邑はいつもレンのそばに寄り添い、やさしく抱きしめてあげるのです。

よしよし、さあおいで。
辛いよね、痛いよね。でも大丈夫、私がいつもここにいる。
あなたは決してひとりじゃない。
私がここにいてあげる。私が必ず守ってあげる。

だから大丈夫・・・・・大丈夫。
夜が怖いなら、ここでおやすみ。

月夜の子守唄のイメージ

孤独の中で泣いているその子を、その子の深く傷ついた心を、私はいつも抱きしめてあげていました。身も心もボロボロとなり、小さな身体を震わせて泣いているレン。そんな彼女をやさしく抱きしめながら、私は心に決めていたのです。

この子は、この子だけは何があっても私が守る。この命尽き果てるまで。
あの時守れなかったいのちを、あの時見捨ててしまったいのちを、今度こそ守ってみせる。

私、空也はお邑の話をただただじっと聞いていた。あまりの壮絶さにこちらの心も痛まずにはいられない。そして同時に、私は二人の間にはとても強い絆があることも感じ取っていた。

お邑とレン、彼女たちは、いつ終わるかも知れぬ時をずっと二人で生きてきた。圧倒的な絶望に打ちのめされて、崩れ落ちてしまう前に、彼女たちはたった二人で必死になってその命を繋ぎとめてきたのだ。

それはあまりにも悲しく、痛みを伴う絆だった。しかしだからこそ、二人はお互いに強く結びついたのだ。お互いがお互いにとって、生きてゆくための最後の希望だったのだから。

ちなみに、大きな白い犬の小太郎は、彼女たちがある夜羅城門で野犬に襲われそうになっていた時に助けてくれたらしい。その巨大さと、どこか堂々とした佇まいに、野犬たちは怯えて逃げ去ったのだという。お邑とレンが羅城門に住みながら、これまで野犬や盗賊に襲われなかったのは、この不思議な犬のおかげでもあるのだろう。

大きな白い犬の小太郎
小太郎はおそらくただの犬ではない。人々を守る鬼神(精霊)か何かの化身であろうか。

私はお邑の話を聞いて、無常の世をギリギリの瀬戸際で必死に生き抜いてきた二人と、一匹の姿を知ったのだった。

「第3楽章 光へと続く新しい明日を」へとつづく。

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