第2楽章 だからこそ生きてゆく、こんな時代の真ん中で―後編―
投稿日:2024年03月14日投稿者:じゅうべい(Jubei)
カテゴリー:第12遊行 名もなきものたちの絆―だからこそ生きてゆく、こんな時代の真ん中で― , 平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
後編:だからこそ生きてゆく、こんな時代の真ん中で。 荒れはてた京の都に祀られし、生々しく向かい合う、 男根と女陰が刻まれた男の女の神像。 人々は今、これを岐神(ふなどのかみ)、あるいは御霊(ごりょう)として東西の京の四つ […]
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平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
後編:だからこそ生きてゆく、こんな時代の真ん中で。 荒れはてた京の都に祀られし、生々しく向かい合う、 男根と女陰が刻まれた男の女の神像。 人々は今、これを岐神(ふなどのかみ)、あるいは御霊(ごりょう)として東西の京の四つ […]
前編:怨霊跋扈と岐神(ふなどのかみ) 「いつもすまんのう、若いの」 俺、辰巳はその日も、西鴻臚館(にしこうろかん)で共に時を刻んでいる貧者や病者たちのお世話をしていた。 空也様が東市で乞食行をして得てきた食べ物や薬をこの […]
後編:許される道は必ずある 「すべてはそこから始まるのだ。己の罪を自覚し、懺悔することから。そこから善の道を求める心が生まれ、その心が明日への道を照らすのだよ」 空也様は、ゆっくりとやさしく、それでいて力強い言葉で俺にこ […]
前編:明日への道を照らす心 「今日もいい天気ですね」 俺、辰巳はその日、太陽の光が降り注ぐ青い空の下で、鴻臚館(こうろかん)の外に設置されている木製の長椅子に腰掛けて過ごしていた。隣には空也様が共に腰掛けており、地面では […]
後編:青い風の光 東市は今やあらゆる階層の上下の区別を超えて、 実に多くの皆の衆の活動のおかげで成り立っているのだ」 と、空也上人は「空」と「東市」と書かれた地面の上部に「市司」、右側に「市人(売る者)」、下部に「買う者 […]
前編:あらゆる階層の上下の区別を超えて 「では上人(しょうにん)どの、阿弥陀仏さんは今ここにもいらっしゃるというのかい?」 「ああ、いつでも、どんな時でも、どんな場所にもいらっしゃる。こうして念仏を称えれば、阿弥陀仏様は […]
後編:阿弥陀仏の光 ―念仏はすべてのわれらを救うためにあるのだ― 上人(しょうにん)様は表情穏やかに、東市で念仏について聞いてきた人にこのように答えられたのだという。 「南無」とは信じ委ねること、 「南無阿弥陀仏」とは、 […]
前編:市聖(いちのひじり)の阿弥陀念仏 「さあ、着きました」 俺、辰巳はその日、お邑に連れられて京の都の東市に来ていた。 青い空の下で、心地よく穏やかな風が頬をなでる。今日も実に様々な人が行き交い、売り買いを通じそれぞれ […]
後編:穏やかで、強く、温かいつながりの中で ありがとう、お邑(おゆう)。 俺を助けてくれて、支えてくれて、本当にありがとう。 そう思っているのは、おそらく俺、辰巳だけじゃない。鴻臚館で生活するすべての俺たちが思っているこ […]
前編:穏やかな温もり 明かりが灯される 今日もこの場所には、都の路上でその日暮らしをしていた病者や貧者、孤児たちが、お互いに寄り添って過ごしている。ここには様々な事情で都にて貧者や病者、孤児となってしまった人が生活してい […]
後編:それでも俺は、変わりたい 「あなたは誰よりも知っている。喪った悲しみを、見捨てられた痛みを。それが・・・・それがどれだけ痛いものか、どれだけ悲しいものかを。誰よりも深く知っている」 いいえ、それだけじゃない。 星空 […]
前編:それでもまた、やり直せる。 「あの子は・・・・あの子は俺の腕の中で・・・・・」 満天の星たちが煌めく空の下で、俺は女にすべてを告白した。 ●打ち続く飢饉と洪水で村を捨て、都に出てきたこと。 ●都で僕隷として貴族に仕 […]
後編:悪夢の始まり 間に合ってくれ、どうか、どうか間に合ってくれ・・・・・。 夜道を全力で走り抜け、家の前にたどり着いた時だった。 「もう逃げられんぞ!汚らわしい賊めが」 「なにをなさるのです!私たちは」 「うるさい!残 […]
前編:悪業の果て 妻である摩耶と娘である沙羅に隠していたこと。それは、俺が盗人として都で活動していたことだった。もちろん二人にはそんなことは一度も話していない。かつて摩耶に助けられた時も、それは言わなかった。二人には宮仕 […]
後編:孤独な姫君 彼女はとても強く、やさしい女だった。 俺はそんな彼女が好きだった。だからこそ心から尊敬し、慕っていた。 貴族の家に盗みに入り、罠にはまった末に刀で斬られて重傷を負い、路上で力尽きてしまった俺。そんな俺を […]
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