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前編:あらゆる階層の上下の区別を超えて

「では上人(しょうにん)どの、阿弥陀仏さんは今ここにもいらっしゃるというのかい?」
「ああ、いつでも、どんな時でも、どんな場所にもいらっしゃる。こうして念仏を称えれば、阿弥陀仏様はいつでも私の前に姿を現わして下さるのだよ」

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏」。

青空から照らされる陽の光

青い空が天を覆い、青い風が吹く都の市で、鹿皮の衣に身を包みし空也上人が、今日も人々と共に語らう。市の雑踏のただ中で、薦を廻らしそこに坐し、眼前に乞食用の破盆を置き、穏やかに食を乞いながら。人々と共に念仏の教えを分かち合っている。

「へえ、どこにいると言うんで?」
「今、ここに」
「なんだよ、見えねえじゃねえか」
「柴樹(しばき)どの、阿弥陀仏様に姿かたちはないのだ。しかし念仏を称えた時、吐息となってわれらの前に姿を現わして下さるのだよ」
「わっかんねえな、どういう理屈だ?」
「つまりは、こういうことなのだ、柴樹どの」
と、空也上人はそこらに落ちていた枝きれを取り、地面に「空」の字を書き、それをマルで囲った。

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丸で囲われた「空」(くう)の文字。

「阿弥陀仏様は、私たちに〈空〉(くう)の教えを示して下さっているのだよ」
「くう?」
「そう、空だ」
空也上人は枝きれで空の字を指した。
「空の教え、それは一言で言うと、この世に存在するあらゆるものは、実に多様な関係性の中で成り立っているものであって、もともとは固定的な実体というものを持ってはいない、という教えのことをいうのだよ。阿弥陀仏様はその教えをいつでも私たちに示して下さっている」

だから今この時も、
阿弥陀仏様は姿かたち、固定的な実体を持つことなく存在している
のだ。

姿かたちなき阿弥陀仏のイメージ-min

「あらゆるのものがそうであるように、仏である私も、もともとは固定的な実体を持ない存在なのです」、と。

「しかしよ上人」
柴樹と呼ばれた人は、上人様に続けて問いを投げかけた。
「その〈空〉の教えが俺たちの生活とどう関わるってんだ?」
「そうだな・・・・たとえば」
と、上人様は枝きれを使って「空」の字の左側に縦書きで「東市」(ひがしのいち)と書き、それを四角で囲う。

丸で囲われた「空」(くう)の文字と、四角で囲われた「東市」(ひがしのいち)の文字。

「この世に存在するすべてのものは、もともとは固定的な実体はなく、存在しないものなのだ。この東市も・・・・」
と、枝きれで「東市」の字を指す。
「もともとは、この場所に存在してはいなかった」
上人様はさらに話を続ける。
「ではなぜここに市が成り立っているのか。それは紛れもなく、ここにいるすべての皆の衆のおかげで成り立っているのだ」
「俺たちのおかげで?」

「そう。
・モノを売る者は買う者に安楽を与え、モノを買う者は売る者に安楽を与える。
・東市で売るモノは、地方から人の手によって京の都に運搬され、やがてお店の陳列台に置かれてゆく。
・そして東市は、朝廷から任命された市司(いちのつかさ)のおかげで一応の安心安全が保たれている。
・さらに言えば、地方で様々なものを作っている民たちは、東市に生きるすべてのもの、ひいては都に生きるすべてのものたちの命を支える役割をも果たしている。

東市は今やあらゆる階層の上下の区別を超えて、
実に多くの皆の衆の活動のおかげで成り立っているのだ」

〈後編に続く〉

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