後編:阿弥陀仏様の子守唄

晴天の羅城門

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

私はレンを抱きしめながら、レンの頭を撫でながら、口に任せて阿弥陀念仏を称え始めていた。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀念仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀念仏」

「それ、なあに」
レンが顔を上げて私に聞いてくる。
「これはね、お守りの言葉だよ。南無阿弥陀仏、こう称えると、阿弥陀仏様が私と、レンと、小太郎と、そしておねえちゃんを守ってくれる」
「ほんと?」

「ああ、本当だとも。阿弥陀仏様はね、この世に生きる、すべてのものたちを救おう、と誓われた、すごく偉いお方なのだよ。その阿弥陀仏様が、苦しんでいる私たちを救う方法として勧められたのが、南無阿弥陀仏、と口に称えることなのだ」

私はもう一度、口に任せて南無阿弥陀仏と称えてみせた。

水色に光り輝く浄土の中で、癒しを与える阿弥陀仏様

「南無とは、信じてお任せすること。南無阿弥陀仏とは、限りない阿弥陀仏様の光の中に、その身を任せて生きること。だから、一度でも南無阿弥陀仏と称えれば、阿弥陀仏様は必ず私たちを守ってくださる。いつでもそばで、見守っていてくださるのだよ」

「今もここにいてくれてるの?」
「ああ、ずっといてくれているよ」

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

「だから、安心をし。阿弥陀様はずっとここにいてくださっているから」
私はレンの身体を包み込み、その背中をやさしくさすってやった。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

私は口に任せてゆっくりと、阿弥陀念仏を称え続ける。まるで子守唄のように、やさしく、ゆっくりと、穏やかに。幼いこの子の背中をさすりながら。そして時に、掌でポン、ポンとやさしく背中をたたきながら。私は念仏を称え続ける。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

さあ、もう大丈夫だよ。阿弥陀仏様はここにいる。ずっとここにいてくれる。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

だから、安心していいよ。もう怖いものはどこにもない。もう痛いものもどこにもない。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

阿弥陀仏様は守ってくれる。きっと君を、そして君たち守ってくれる。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

だから、もう大丈夫だよ。もう安心していいんだよ。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

・・・・・すぅ・・・・・すぅ・・・・・すぅ・・・・・。

・・・・・しばらくすると、レンは小さい寝息をたてて、私の胸の中で眠っていた。呼吸によって、レンの温かく、小さな背中が手の中でゆっくりと前後している。その表情は、穏やかで、柔らかで、可愛くて、心からの安心感があった。

よしよし。どうかゆっくりおやすみよ。
安心していい。私がここにいてあげるから。

私は小さいその子を抱いて、口に任せて称え続ける。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」

私がここに、いてあげるから。

ねむの木

第5遊行 羅城門・阿弥陀物語―温かく、やさしく、穏やかに― (完)

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