後編:魂のゆくえ

ごめんなさい・・・・。ごめんなさい・・・・・。

よしよし、だいじょうぶ、だいじょうぶ・・・・・だいじょうぶ、だいじょうぶ。

癒しの阿弥陀仏様

思い切り泣いてすっきりしたのか、お邑は落ち着きを取り戻し、再び自身の身の上を語ってくれた。

心から信頼していた父と母を亡くし、私は深い悲しみの中に沈んでいました。そんな私を心から気の毒に思っていたのが、当時まだ生きていた乳母だった。引き裂かれた私の心を少しでも癒そうと、彼女の計らいによって某全前司という者が婿として通ってくれることになったのです。

その人はとても、とてもやさしかった。

私の身の上を知って、心からいたわってくれました。私の深く傷ついた心をいつも温かく抱きしめてくれて、本当に、本当に大切にしてくれたのです。私もそんな彼の温かい人柄に惹かれて、いつしかお互いに心から慕い合う仲になっていました。

でも・・・・・でも。

それも長くは続かなかった。無常なる現実が、またも私たちの絆を引き裂いてしまったのです。ある日、某全前司の父親が遠くの国の守(国司)になったことで息子である彼も一緒に下っていくことになってしまった。私と婿であるその人は、別れぎわにお互いに将来を固く約束していました。

手と手が触れ合うイメージ

いつか必ず戻って来る。その時はまた、一緒に暮らそう。
だから待っていてくれ。必ずまた戻って来るから。必ず。

彼のその言葉を信じて、私は待ちました。彼がもどってくるのを、私は待ち続けました。しかしその約束もむなしく、それから五年もの間彼の消息はまったく途絶えてしまったのです。その間に、それなりに立派だった私の家も次第に荒れはててゆき、その荒んだ生活の中で乳母も病に倒れて死んでしまいました。

そして私はついに、たった独りこの世にとり残されてしまったのです。

慕っていた父と母は幼い私をおいて遠くに逝ってしまった。地方へ下った夫はもう戻ってこないのでしょう。そして、荒んだ生活の中でたった一人私を支えてくれていた乳母も死んでしまった・・・・・。

もういい・・・・・。もうなにもかも、どうでもいい。

どうしようもない、救いようのない絶望と孤独が私を襲いました。暗闇の中、荒れはてた家の中で一人孤独に身を沈めるしかなかった私は、ついにすべてを諦めてしまった。そしてボロボロになった家を捨てて、都をあてもなく彷徨う日々を続けることになってしまったのです。

虚無と絶望に支配された都の中で、ボロボロになり、あてもなく路上を彷徨う日々。そうしているうちに辿り着いたのが、都の表玄関たる羅城門でした。

その巨大な門は都と異界とが接する場といわれており、昔から鬼や物の怪と出会う場所ともいわれています。だから、特に夜になってあえてここに近づこうとする者は、誰もいませんでした。

闇夜の羅城門

もはや、私のいのちももうすぐ露となって消えゆくさだめ。
ここでわがいのちを鬼に捧げる最期も、いいのかもしれない。

鬼が出ると噂されるその羅城門の下で、私はそう思っていました。そしてその日から、私の羅城門での生活が始まったのです。

「第2楽章 崩れ落ちる前に―悲しみを包む子守唄―」へとつづく。

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