第2楽章 悪業の果て―後編―
投稿日:2023年05月25日投稿者:じゅうべい(Jubei)
カテゴリー:第10遊行 闇の盗人物語 , 平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
後編:悪夢の始まり 間に合ってくれ、どうか、どうか間に合ってくれ・・・・・。 夜道を全力で走り抜け、家の前にたどり着いた時だった。 「もう逃げられんぞ!汚らわしい賊めが」 「なにをなさるのです!私たちは」 「うるさい!残 […]
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平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
後編:悪夢の始まり 間に合ってくれ、どうか、どうか間に合ってくれ・・・・・。 夜道を全力で走り抜け、家の前にたどり着いた時だった。 「もう逃げられんぞ!汚らわしい賊めが」 「なにをなさるのです!私たちは」 「うるさい!残 […]
前編:悪業の果て 妻である摩耶と娘である沙羅に隠していたこと。それは、俺が盗人として都で活動していたことだった。もちろん二人にはそんなことは一度も話していない。かつて摩耶に助けられた時も、それは言わなかった。二人には宮仕 […]
後編:孤独な姫君 彼女はとても強く、やさしい女だった。 俺はそんな彼女が好きだった。だからこそ心から尊敬し、慕っていた。 貴族の家に盗みに入り、罠にはまった末に刀で斬られて重傷を負い、路上で力尽きてしまった俺。そんな俺を […]
前編:闇の盗人 この人になら、話せるかもしれない。 この人に話したら、何かが変わるかもしれない。 そう思ったからかもしれない。満天の星たちが煌めく夜空の下で、俺はゆっくりと、俺を助けてくれたその女に俺のことを話し始めた。 […]
後編:哀しみ・愛・そして・・・・・ 怪我が治りきっていなかった俺は、女に支えられながら建物の外に出て、そばにあった木の長椅子に二人で腰掛ける。ふと、何気なく空を見上げると、幾つもの小さな星たちが夜空の上で煌めいている姿が […]
前編:THE PHANTOM PAIN お父さん、痛いよ・・・・痛いよ・・・・お父さん、助けて。 沙羅、待ってろ。今、今助けてやるから。 お父さん、痛いよ・・・・血が・・・・止まらないよ。 くそ・・・・くそ!誰か、誰かい […]
後編:俺たちに明日はない? 「ねえさま、目を覚ましたよ」 女の子の声がする。気がつくと、さっきまで俺を包み込んでくれていた白い光はなくなっていた。かわりに今の俺の目に見えているのは、木造りの天井だ。そしてどうやら俺は、木 […]
前編:闇よりの目覚め ・・・・・ここは、どこだ・・・・・・。 俺は、朦朧とした意識の中で、自分がだんだんと目覚めていくのを感じていた。閉じた目をゆっくりと薄く開いてみると、眩いばかりの白い光が俺の目の中に飛び込んでくる。 […]
後編:名もなきものの、いのちの叫び 俺たちに救いはない。 俺たちに明日なんて、ないんだ。 いつかどこかで聞いたことがある。この世には、苦しみに満ちた世界を生きる俺たちを救う、仏や菩薩なんてものがいるらしいことを。だが、俺 […]
前編:漆黒の闇の淵から ここは・・・・・・・・どこだ。 俺はその時、暗闇の中で倒れていた。ここがどこなのか、どうして俺は倒れているのか、それはさっぱり分からない。ただはっきりとわかるのは、ここが漆黒の闇に包まれているとい […]
後編:その先の明日へ。 私たちは今、新しい旅に出る。今日はその旅立ちの日。ここから先はどうなるのかは分からない。私たちの行く道の先、そこには明日なんて見えはしない。約束された未来もない。でも、だからこそ、私たちはその先を […]
前編:新たなる旅立ち 「さあレン、じっとしていてね」 私、お邑は今、鴻臚館の中でレンの髪の毛を櫛でといてあげています。この櫛は、亡くなった母が私に残してくれた唯一の形見の品。母が亡くなって以来、私はどんな時でもこの櫛を肌 […]
鴻臚館から見た夕日は、私を穏やかに見守っています。あの夕日こそは、すべての私たちを見守る阿弥陀仏様そのものなのでしょう。阿弥陀仏様は、こうしていつでも私たちを見守っているのです。 「おねえちゃん!」 ふと、私を呼ぶ声が聞 […]
後編:愛する人へ 「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏」 私は西日に向かってお念仏を称えながら、レンのことを想っていました。私の大切な、私の大好きなレンのことを。 「レン、あなたはどうして、いつも南無阿弥陀仏 […]
前編:弥陀の西日に照らされて 鴻臚館で病に伏していた私、お邑は、空也様とレンと、蓮性様の介抱のおかげもあり、数日の後にはすっかり精気を取り戻しました。今では自分で歩けるようになるまでに回復しています。体調もすっかりよくな […]
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