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前編:弥陀の西日に照らされて

鴻臚館で病に伏していた私、お邑は、空也様とレンと、蓮性様の介抱のおかげもあり、数日の後にはすっかり精気を取り戻しました。今では自分で歩けるようになるまでに回復しています。体調もすっかりよくなりましたので、付近を散策でもしようかと思い、鴻臚館の外に出てみることにしました。入り口の扉を開けてみますと、なんとも暖かく穏やかな風が、私の身体をやさしく包みこんでくれます。茜色の空に目を移しますと、数羽の鳥たちが自由に羽を広げて飛んでいるのが見えました。

どうやら外はもう夕方のようですね。

ゆっくりと歩を進めて南門をくぐり、七条大路に出て西の方を見てみます。すると、やさしく、温かい光が私を包んでくれるのでした。

夕日

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私は穏やかに目を細め、その光を愛おしく見つめます。

ああ、まさに空也様のおっしゃった通り。

茜色に染まった空。その上空に傾く、穏やかで美しい西日。そのすべてが、私を安楽の極楽浄土に迎えて下さっているようで、とても感動をいたしました。あの光り輝く西日こそは、まさに阿弥陀仏様そのものなのでしょう。これほど感動しないことがかつてあったでしょうか。

その西日の前に立った私は、穏やかな陽の光を前に両手を広げてゆっくりと息を吸い込み、ゆっくりと吐いて深呼吸をします。

ああ、いつ以来でしょう。
外がこんなに気持ちよく、陽の光がこんなにも美しいと思ったのは。

まさに今、阿弥陀仏様は西方の極楽浄土より、私をお迎えに来てくださっているのでしょう。なんとありがたいとでしょうか。

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏」

気がつくと、私は西日に向かい、両手を合わせて口にお念仏を称えていました。阿弥陀仏様は、いつでも私を護って下さっている。私を見守って、そこにいて下さっている。

レン。私は今も感じているわ。阿弥陀仏様の存在を、確かに今も感じているわ。

阿弥陀仏の画像

「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏」

私は西日に向かってお念仏を称えながら、レンのことを想っていました。私の大切な、私の大好きなレンのことを。

「後編:愛する人へ」へとつづく。

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