第2楽章 そんなあなたに感謝を込めて―後編―
投稿日:2022年01月17日投稿者:じゅうべい(Jubei)
カテゴリー:第4遊行 東市の市人(いちびと)権三の帰依―菩薩としてただひたすらに― , 平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
後編:そんなあなたに感謝を込めて 私はあらためて知らされた。この世を、この都を覆いつくしている煩悩の恐ろしさを。その煩悩に囚われ、誤った認識で弱き者を迫害してしまう人間の恐ろしさを。人の心の弱さがどれほど恐ろしい感情を生 […]
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平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
後編:そんなあなたに感謝を込めて 私はあらためて知らされた。この世を、この都を覆いつくしている煩悩の恐ろしさを。その煩悩に囚われ、誤った認識で弱き者を迫害してしまう人間の恐ろしさを。人の心の弱さがどれほど恐ろしい感情を生 […]
前編:盗人の真相―賢い愚か者の罠- 「実はな、犯人はもう捕まっていたのさ」 「なに?」 東市で盗みをはたらいていた犯人はもうすでに捕まっている?それはどういうことだ?ということは、この童女が犯人ではないということなのか? […]
後編:権三のお布施 すべての人は皆、今この時も阿弥陀仏様の光の中で、平等に同じいのちを生きている。そこにはもはや差別や区別などない。どこにも、あるはずがない。 私はそう権三に言いたかったが、荒廃した都の中で〈穢れ〉の観念 […]
前編:囚われの市人、権三 権三どの、どうかそなたはそなたの立場で、そなたの場所で、ただひたすらに誰かのために尽くしていってほしい。この世で人々の救済に励む菩薩として。区別も差別も智慧も愚痴も、すべてを捨ててただひたすらに […]
「いや、はなして」 「うるさい、おとなしくしろ!」 ああ・・・・・。 私はその光景に思わず息をのんで小さな悲鳴を上げてしまった。 その姿は、人間と呼ぶにはあまりにも悲惨すぎるものだった。童子の顏と腕は黒い垢に覆われ、ボサ […]
「待て、このガキ!」 賑やかな昼下がりの東市に、突然怒声が響き渡る。私、空也はその声で光と闇の瞑想から目覚めることになった。あれは東市で干魚の商いをしている鄽(いちくら=店)の主、権三の声だ。あの荒っぽく図太い声はあの人 […]
私、空也は今、暗闇の夜の中にいる。闇が私を包んでいる。見渡すかぎりそれはどこまでも広がって、果てなく世界を包んでいる。そんな世界の真ん中で、私は独りそこに坐し、耳を澄ませてその声に耳を傾ける。闇に包まれし現実の世で、痛み […]
私、お邑は今日も生きている。闇に包まれた巨大な羅城門の階段に座し、無常の風に晒されながら、空に輝く星を見つめて叶うことなき夢を見る。そう遠くない、己の運命をさとりながら。 「おねえちゃん」 そう呼ぶ声がして、私はふとわれ […]
「まあ、なんて美しい」 ふと、私、お邑は闇夜の空に燦然と輝く星たちを見てそうつぶやきました。夜空いっぱいに散りばめられたその輝きは、夜の闇に包まれた私の心にわずかながらの光を灯し、つかの間の幻想へと私を誘ってゆきます。苦 […]
京の都平安京の東市。そこではあらゆるもの、あらゆる人が、互いに多様な関係性の中、あるがままに命を支え合っている。そこに生きる独り独りが、この世の救済に励むものとして、あるがままに己を忘れ他者のために尽くしている。そこには […]
ワイワイ、ガヤガヤ。 「いらっしゃ~い」「ありがとうございました」「またどうぞ」 太陽が眩しい・・・・・。 私、空也はその光の眩しさに思わず手で目を覆う。しかしそれは、不快をもたらすものではない。むしろとても心地よい気持 […]
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