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前編:盗人の真相―賢い愚か者の罠-

「実はな、犯人はもう捕まっていたのさ」
「なに?」
東市で盗みをはたらいていた犯人はもうすでに捕まっている?それはどういうことだ?ということは、この童女が犯人ではないということなのか?
私、空也は傍らで不安そうになりゆきを見守っている童女を見て、それからもう一度権三に視線を戻した。

突然のことで私もわけがわからなかったが、市人の権三はこう説明してくれたのだ。

なんでも、彼によるとその犯人は私と同じ乞食僧であったのだという。その乞食僧は偸盗の技量にかなりの覚えがあり、人の気づかぬうちに密かに市の物を盗んでは、それを手前勝手に売りさばいたり食したりしていたのだ。いわゆるスリの達人であるその僧は、これまで何度もそうした行為を繰り返してきたのだという。

しかし、悪行とはいつか必ず暴かれるもの、実はそうした悪行を密かにずっと見ていた者がいたのだ。不思議なことにその者もまた僧の風貌をした男であったが、スリの乞食僧とは違ってどこか風格漂う僧だったのだという。その男が、市で偸盗行為を繰り返す乞食僧を捕らえ、市司に引き渡したのだ。

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「ということは、この子は無実の罪を着せられていたのか」
私はその話を聞いて愕然とし、ますます悲しい気持ちになってしまった。
さらにそれだけではなかった。スリをはたいていた乞食僧は、あろうことか人々が忌み嫌っていた死穢童子の存在を利用して童子を犯人に仕立て上げ、穢れの恐怖とともに市の人々を密かに煽っていたのだという。その結果、人々は乞食僧の策にはまって死穢童子が市の盗人であると思いこみ、より激しく嫌悪するようになってしまったのだ。

―いったい・・・いったいどれだけこの子を苦しませれば気が済むのだ。なぜこんなにも苦しんでいるこの子が、悪の犠牲にならなければならない―

私はあらためて知らされた。この世を、この都を覆いつくしている煩悩の恐ろしさを。その煩悩に囚われ、誤った認識で弱き者を迫害してしまう人間の恐ろしさを。人の心の弱さがどれほど恐ろしい感情を生み出すのかを、あらためて知ったのだった。

嘲笑する人々

「後編:そんなあなたに感謝を込めて」へ続く

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