夜空にきらめく星々
私、お邑は今日も生きている。闇に包まれた巨大な羅城門の階段に座し、無常の風に晒されながら、空に輝く星を見つめて叶うことなき夢を見る。そう遠くない、己の運命をさとりながら。

「おねえちゃん」
そう呼ぶ声がして、私はふとわれに返って幻想から現実に引き戻されました。そして声のする方を見ると、闇の中で年は九歳くらいの小さな童女が目をこすりながら私をじっと見つめているのが見えます。その子もまた、私と同じくボロ切れのような着物をまとい、ぼさぼさの髪を肩まで伸ばしている。まだ幼く、小さく、弱弱しいいのちの鼓動が私の心に響いてくる。そんなこの子を見ていると、私はいつもどうしようもなく愛おしい気持ちになってしまうのです。私を見つめるその眼差しは、今にも泣きだしそうでいて、でもそれをひっしにこらえているように見える。まるで捨てられた子犬のような、本当は誰かにすがりつきたくてたまらないけど、でもそれをじっとこらえているような、哀しくもとても愛しい眼差し。その眼差しが、私にさらなる愛情を芽生えさせていくのです。

そう、またなのね。まったくしょうがない子。

今この時、彼女の存在が私の荒んだ心にもう一つの灯りをともしてくれている。そうだ。私にはまだ失くしていないものがある。この子の眼差しが、どうしようもない痛みと哀しみを宿したその眼差しが、今日も私を求めている。あなたのその眼を見ていると、私はいつもどうしようもなくあなたをこの手で抱きしめたくなるの。
「おねえちゃん、寝られないの。いっしょに寝てもいい?」
幼い彼女の口から出る小さな叫び。その叫びに、私はいつもの笑顔をたたえ、小さく頷いてこたえました。

もちろん。さあ、行きましょう。

私はゆっくり立ち上がり、その子といっしょに羅城門の東の隅の方へ行きました。そこには莚が地面に敷いてあるからです。ボロボロではありますが、何もないよりはいいでしょう。私たちはいっしょにそこに座って、冷えた身体を寄り添って温め合うのでした。

さあ、おいで。

私の隣に座りこんだ彼女が、そっと私にその身をあずけてきます。身体が凍りついたように冷たい。都の夜風に吹かれたせいでしょう。このごろ都の夜は寒い。身につけているものがボロ切れのような着物だけですから、肌が冷えるのもいっそう早くなるのです。

おねえちゃん、さむい。

私は彼女を抱き寄せて、その子の冷えた身体を包み、背中をやさしくさすってあげました。こんなに冷えて、かわいそうに。でも大丈夫、私が温めてあげるから。また怖い夢でも見たの?またお母さんの夢を見たの?大丈夫、怖かったらここにおいで。私が守ってあげるから。大丈夫、大丈夫。

凍てつくような冷たい夜に晒されて、この子は身も心も凍りついている。そんな彼女の心を、私は今日も抱きしめて、やさしくゆっくり温めてあげます。

大丈夫、大丈夫。私がいっしょにいてあげる。夜が怖いなら、ここでおやすみ。

私は今夜もその子を抱いて、京の都の南端にある、羅城門でそのいのちをつなぐのです。明日をも知れぬ闇の中、二人寄り添いいのちの音を響かせて、その温かさを分かち合いながら。

闇夜に包まれた羅城門

大丈夫、私がずっとそばにいる。私がずっといてあげる。

第2遊行(完)

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