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読者の皆さんの中で、「ニューバード」というパンの名前を耳にしたことがある人はどれくらいおられるでしょうか?
恐らく京都人でない方や、例え京都在住であっても50代以下の世代の方々にはピンと来ない名称だろうと思います。
若い世代の中でも、稀に「ああ、その名前聞いたことがある!」と手を叩く人があるかもしれません。
けれどもそれは大抵の場合、新聞や雑誌或いはテレビなどのマスメディアによって、ニューバードが京都のご当地パンとしてもてはやされるようになったのを見聞きした経験に基づいていることが多いのではないでしょうか。
実際に本物のニューバードを目にし、手に取って味わったことのある人は、今日の京都でも珍しいだろうと思います。

「ニューバード」の歴史を遡る

京都のパンの年間消費量は神戸と毎年全国で1、2位を争う、という話は有名です。
実際に京都市にはパン屋が280店舗以上あって、それぞれの店が食事パンだの惣菜パンだのベーグルだのといった、見た目も味もこだわりの個性的な品ぞろえを展開しています。

そんなご時世の中にあって、どうでしょう。
これが「京都のご当地パン」といわれる「ニューバード」の写真です。

ニューバード

ニューバード

外見はいわゆるコッペパンを揚げただけ。
で、切り口の断面はこんな具合。

ニューバードの切り口の断面

ニューバードの切り口の断面

 
写真からも分かるように、
特徴は
 
①ソーセージが入っている。
②生地にカレー粉がまぶしてある。

の2つだけです。
昨今のパン屋でよく見かけるオシャレなパンとは全く趣を異にする、シンプルで素朴な外見です。

お味の方はどうかというと、一口ほおばると揚げたパン粉がざっくり口中に広がり、続いてパンの真ん中のソーセージのしょっぱい味とソーセージの周囲のパン生地にまぶされたカレー粉の風味が一緒になって、なかなか後を引く味わいです。
少し油っこいのですが、それがかえってほのかなカレー粉の風味を引き立たせているから不思議です。
中央のソーセージは、本来のニューバードは魚肉でした。

では、何故こんなに素朴なパンが京都のご当地パンとして、今も語り継がれているのでしょうか?

今から約半世紀以上前、京都には西湖堂製パンという会社がありました。
元は、近江出身の鳥居繫雄という人物が、京都で印刷会社を起こして成功し、その資金を元手に製パン業を始めたのです。
 
西湖堂製パンは非常に繫盛して、昭和40年代の半ばには現在でも京都の老舗ベーカリーとして名高い進々堂と京都でシェアを競っていました。

当時の西湖堂の主力販売網は、「バード」と銘打たれた独自の直営店でした。
「バード」という販売店の数は、最盛期京都府内で66店に及んだそうです。
その頃はパン屋といっても、今日のように店の経営者が独自に生地をこねるのではなく、大手のパン会社から生地を仕入れてオーブンで焼くだけというのがほとんどでした。
「バード」のチェーン店も同様で、西湖堂製パンが成形した冷凍パンを仕入れて各々の店のオーブンで焼いて販売していたのです。
 
その西湖堂製パンが「バード」チェーンを展開するにあたって、目玉商品として売り出したのがこの「ニューバード」だったのです。

名前の由来はごく単純で、新商品だから「ニュー」、「バード」チェーンが売るパンだから「バード」を掛け合わせて「ニューバード」と命名されたそうです。

この「ニューバード」は当時の京都で大変な人気を博しました。

コラム子も幼い頃、母親に連れられてパン屋の軒先で度々「ニューバード」を買ってもらった記憶があります。
出始めの頃「ニューバード」の値段は1個20円でした。
油のにじんだポリ袋に入った「ニューバード」は、嚙み心地もザクザクではなくてじとじとでしたが、それでも当時のコラム子には非常なご馳走でした。
今振り返ってみると、「ニューバード」はいわゆる惣菜パンのはしりだったのでしょう。

さて、そのように隆盛を極めた西湖堂製パンと傘下の「バード」チェーンでしたが、バブル崩壊後の不況のあおりを食って20世紀末に倒産してしまいました。

「バード」チェーンは軒並み看板を下ろして廃業に追い込まれたり、数は少ないですが名前を変えてパン屋を続けています。

そうした過去の「バード」チェーンの生き残りの店舗の中で、今も昔懐かしい「ニューバード」が販売されているというわけです。

令和にもてはやされるレトロパン「ニューバード」事情

昭和が過ぎ去って早40年近くが経過しようとしいていますが、昭和を知らない若い世代の間で昭和レトロブームが巻き起こっているとメディアではしばしば報じられています。
昭和の時代は百貨店の屋上遊園地が賑やかだったとか、商店街が繫盛していたとか、一般家庭に内風呂が普及していなかった当時は銭湯の数が多かったとか、今では見かけなくなったものが何でもかんでもレトロでオシャレと脚光を浴びる風潮がそこかしこに見受けられます。
そんな時代の追い風を受けてこの「ニューバード」も、京都の名物の一つに挙げられるようになってきました。
今から10年ほど前は絶滅危惧種に近いパンでしたが、レトロブームも手伝って新しいタイプのパン屋の中でも焼いているところがあります。

では、コラム子が実際に足を運んで話を聞いたパン屋を紹介しましょう。

「カナリヤ」の場合

このパン屋はコラム子の家のほど近くにあって、全部で1500世帯から成る大きな団地の一階に店を構えています。
団地が建設された昭和50年代の初めから店を営んできました。
店構えはいかにも一昔前のパン屋という感じです。

カナリヤの店舗正面

カナリヤの店舗正面

カナリヤの店舗斜め

カナリヤの店舗斜め

カナリヤの看板

カナリヤの看板

ここではその当時から今日までずっと「ニューバード」を販売しています。

店に入って、店の奥さんに話を伺います。
「カナリヤさん、おたくのお店は以前バード西湖堂カナリヤという名前でしたね?」
「そうです。主人のお父さんが始めたんやけど、その時分は西湖堂から種を仕入れていたんです。そやけどお父さんが亡くなって、うちの主人と主人のお兄さんが引き継いで一緒に店をやってました。そうこうしているうちに西湖堂製パンが倒産してしもて、主人のお兄さんはパン屋をやめたんです。その時からバード西湖堂を取ってカナリヤに名前を変えました。」
「『ニューバード』はずっと焼いておられますね?」
「そうですねん。なんというても、西湖堂時代の看板商品やったさかいね。」
「そうでしょうね。昔食べた思い出のあるファンは多いですよね。ところで全盛期の「ニューバード」を知らない若い人も買いに来られますか?」
「最近よう売れるようになってきましたよ。若い人が連れ立って買いにきはります。『「ニューバード」はえらい人気やね。
「今ではご主人がパン生地をこねておられるんですか?」
「そうです。もう西湖堂は潰れてあらへんでしょ。」

ブラザーベーカリーの場合

コラム子はもう一軒ブラザーベーカリーというパン屋を訪ねました。
この店は約5年ほど前に三条商店街にオープンしました。

ブラザーベーカリー店舗外観

ブラザーベーカリー店舗外観

ブラザーベーカリー店舗内部

ブラザーベーカリー店舗内部

こちらの店も「ニューバード」を焼いています。
店のご主人に話しを聞きました。

「早速ですが、ブラザーベーカリーさんは『「ニューバード」を焼いておられますが、それはどんな理由からですか?』
「実は、うちは僕で三代目なんです。店舗の方も僕の代になってからでも、ここが3回目の引っ越しでした。『「ニューバード」についていうと、もともと僕のおじいさんが西湖堂で働いていた関係で焼くようになったんです。おじいさんがパンを焼く技術を身につけて独立したんです。その時の店は「バード」チェーンの一つでした。後を継いだ親父の代で西湖堂が倒産して「バード」という名前をやめて、ブラザーベーカリーにしたんですけどね。そやけど、『「ニューバード」はおじいさんの代からのパンやしね。僕も引き継いでいるんです。それでも、親父の話によると親父や僕の焼いている『「ニューバード」』は本物やないそうですよ。使ってるソーセージが違うんだとか。』

「どう違うんですか?」
「本物の『「ニューバード」』のソーセージは四角形で素材も違っていたそうです。」
「魚肉ソーセージだったんでしょう?」
「魚肉は魚肉でも今のとは違ったらしい。もう、手に入らないんですよ。」
「ブラザーベーカリーさんではこの『「ニューバード」』はよく出ますか?」
「午前中には売り切れますね。昔のファンの方は懐かしがってくれはるし、若いお客さんは雑誌の情報を見てわざわざ買いにこられます。」

むすび

今回実際に足を運んでみて分かったことは、息を吹き返しつつある昔ながらの「ニューバード」は西湖堂製パンが華やかなりし頃に食べた思い出のある世代にはもちろんのこと、昭和を知らないZ世代にも素朴な味わいがかえって新鮮な魅力になっていることでした。

油で揚げてあってほんのりとカレー粉の風味がして、真ん中にソーセージがはいっているだけの「ニューバード」。

どこか昔懐かしい風味が郷愁を誘うのが、今人気が再燃しつつある最大の要因かもしれませんね。

さて、京都で「ニューバード」を焼いているパン屋を記載しておきます。

①カナリヤ(ウインナーフライという名前) 中京区
②ブラザーベーカリー 中京区
③まるき製パン所 下京区
④バード観月堂 伏見区
⑤ぱんのちはれ 左京区
⑥志津屋
⑦ぴいたあパン 右京区
⑧マリーフランス今出川店(フランクドーナツという名前) 上京区

ちなみに「ニューバード」の値段ですが、カナリヤでは180円ブラザーベーカリーでは303円でした。

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