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後編:その先の明日へ。

私たちは今、新しい旅に出る。今日はその旅立ちの日。ここから先はどうなるのかは分からない。私たちの行く道の先、そこには明日なんて見えはしない。約束された未来もない。でも、だからこそ、私たちはその先を目指しこの今を生きてゆく。ただひたすらに、その道を行く。

その先に必ず光があることを信じて、私たちは今日旅に出る。

「お待たせしました、空也様、蓮性様」
私、お邑は綺麗な〈阿弥陀童女〉となったレンとともに鴻臚館を出て、南門で待っておられた空也様と蓮性様、そして大きな白い犬の小太郎のもとへと足を運びました。
「空也さま、蓮性さま!」
レンが皆に駆けよっていきます。
白く輝き、頬に少し赤みがさしている肌。そして、櫛でよく整われて紐で後ろに結われ、綺麗にまとまっている黒く輝く髪。綺麗に生まれ変わった彼女が、元気よく。
「おお、レン。なんと綺麗になって」
「これは・・・・素晴らしいですな」
空也様も蓮性様も、レンの変わりようにたいそう驚いているようです。
小太郎も嬉しそうに尻尾を振り、黒い目を輝かせてレンを見つめています。
「空也様、蓮性様」
私は二人に近づいて、笑顔で頷きました。そう、いよいよここから新しい明日に向かって旅立つ時が来たのです。
「よし、では、行こうか」
空也様の掛け声とともに、私たちは新たなる一歩を踏み出しました。

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これからの私たちは、もはや今までの私たちではありません。阿弥陀仏様の教えを胸に、一人でも多くの人を支えてゆく菩薩として、京の都で新たな歩みを進めていくのです。阿弥陀仏様が私たちに与えて下さった大切な絆。それがあれば、もうどんなことも怖くはありません。たとえ絶望の淵に立たされても、私たちは必ず立ちあがるでしょう。

私たちは、決して一人ではないのですから。

阿弥陀仏の画像

私は澄んだ眼で、鴻臚館の上空に広がる空を見上げました。どこまでも広がっている、碧く紺色の空。雲一つないどこまでも晴れ渡った空。それは青い風を運んできて私の頬をなで、全身を包み込んでくれます。そのやさしい風に吹かれて、私は静かに想いを込めるのでした。

この紺碧の空高く、どこまでも共に歩いて行こう。
信じた未来に続く、その先の明日へ。

青空から照らされる陽の光

どこまでも共に、歩いて行こう。

「第3楽章 絆を胸に―行こう、その先の明日へ―」(完)
「姉妹の絆編」(完)
そして「第8遊行 絆を胸に―行こう、その先の明日へ―」(完)

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