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都会の喧騒の中にありながら、この場所もやはり静かな雰囲気が辺り一帯を支配している。境内に入った瞬間、外の世界と隔絶されてまったく別の、静かな世界に誰もが足を踏み入れる。

不思議だ。まったくもって不思議だ。

雲林院。それが僕が今いるお寺の名前。このお寺はもともと淳和天皇(在位823~833)の離宮(紫野院)で、恒康親王(仁明天皇皇子)の時に雲林院と称した。そして親王から託された僧の遍昭が貞観11年(869年)に天台宗の仏寺(現在は臨済宗)に改めたのだという。かつては堂塔の造営や造仏が相次ぎ、桜の名所ともなった場所だ。

また、『法華経』・念仏の功徳(くどく)によって後世(ごせ=死後に生まれ変わる世界)の菩提(極楽浄土に生まれ変わること)を念ずる菩提講も有名で、平安時代中期(だいたい900年代の初め~1068年ごろまで)には多くの人が雲林院に集ってこれに参加していたのだとか。

菩提講に参加することで、
平等に仏様と縁を結んで救いに与(あずか)る。

平安時代の中期は


土地の私有化の進展と、階層を超えて多様な人々が都で活動・集住するようになったことを背景に、『法華経』の教えで世の中をまとめていこうという動きがあったとされる。

お釈迦様

各々の身分・財力・能力に応じて善い行いを積み重ねてゆけば、
誰もが皆平等に救われてゆく。

この教えで多様な人々を平等に位置づけ、救済の対象としてゆこうとしたのだと。


こうして900年代の後半になると、京都の天台宗のお寺で行われる講会(こうえ)という催しを通して『法華経』の教えが人々に浸透し、平等に仏と縁を結び、救済される場が次々に出現したのだという。

雲林院もまた、菩提講を通し祈りの聖地として人々の心の拠り所となり、大切な役割を果たしていたのだと考えられている。

そんな雲林院は、昔は広大な寺域を持っていたようだが、今は小さなお堂を中心とする小規模なお寺となってなお京都に残っている。

雲林院の門

しかし、そのお堂からは神秘的な何かを感じるからまた不思議だ。このお堂が境内の中心となって、喧騒とはまったく別次元の静かな、厳かな雰囲気を作り出している。

雲林院観音堂

このお堂の中には、
十一面千手観音菩薩様が本尊として安置されている。

雲林院観音堂の堂内

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この観音様は頭上に十一面の顔を持ち、「あらゆる方角に顔を向けた者」という理想を図像化したものだ。私たちの立場と能力に応じて、救済する側の観音様も様々に表情を変えるのである。

十一面千手観音菩薩。

十一面千手観音菩薩さま。

この観音様の手は千本もあり、観音様の救済力の広く大きいことを象徴している。その造像の多くは両手のほかに、左右各々四十本ずつの手がある四十二臂形で、その一つ一つの掌に一眼がある。左右四十本の一本ずつの手が二十五の苦しみの世界を生きるすべての私たちを救い、あらゆる願いを成就させ、すべての私たちを安楽の境地へと導くはたらきをあらわしている。

あらゆる方角に顔を向け、千本の手ですべての私たちを漏らさず救う観音様。それが十一面千手観音様なのだ。
僕はそのまま、観音菩薩様へと思いをはせる。


苦の世俗を生きる私たちの音声(おんじょう)・救いを求める音声を自在に観じておられる観音様は、その名を称えれば、私たちの苦しみの声を聞いて即時にこの世の苦悩から解き放ってくれるという。天・竜や阿修羅、帝釈天等の神、あるいは長者や童男や童女など三十三の身に自在に姿を変えて、すべての私たちを救って下さるのだ。

菩薩

観音菩薩さま。

十一面千手観音様は今日も、ここから参拝者たちを、そしてすべての私たちを見守っていらっしゃるのであろう。そのようことを思いながら、僕はお堂の観音様にお賽銭を入れて祈りを捧げるのであった。

合掌

「南無十一面千手観世音菩薩」

観音様、去年は平穏な時をお与え下さり、ありがとうございました。今年は地震や事故やらで何かと波乱な幕開けですが、どうかすべての私たちをお護りください。そして観音様にとっても、良い年になりますように。

雲林院

参考文献

坂本幸男・岩本裕 訳註『法華経』(上)(中)(下)(〈上〉1962年、〈中〉1964年、〈下〉1967年、岩波書店)。
『法華経』「観世音菩薩普門品第二十五」(坂本幸男・岩本裕 訳註『法華経』〈下〉1967年、岩波書店)。
伊藤唯真「菩提講」(『平安時代史事典』角川書店、1994年)。
菅野博史『法華経入門』(2001年、岩波書店)。
東館紹見「古代中世移行期における法華一乗思想の展開とその歴史的意義」(『真宗教学研究』第二八号、2007年)。
鎌田茂雄『観音さま』(2018年、講談社学術文庫)。

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