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一見敷居が高そうで…、
実は安心して利用できる老舗蕎麦店 河道家養老にて
名物料理「養老鍋」を食す
はじめに
左京区聖護院の熊野神社前のバス停から徒歩10分。
聖護院門跡や平安神宮などからほど近い、静かなたたずまいの住宅地にひっそりと店を構える老舗のお蕎麦屋さん。
店の前に立つと、その風流で雅な趣に圧倒されて誰しも思わずたじろぐことでしょう。
河道家養老の玄関
玄関を入ってすぐの石畳の通路
間違って高級料亭に足を踏み入れたのではないかな?―――と身構えてしまう雰囲気を醸し出している店ですが、お値段は全く心配ご無用、いたって普通の庶民派価格の良心的なお蕎麦屋さん。
それが、本日ご紹介する明治43年創業の京都を代表する老舗の蕎麦店 河道家養老です。
名物料理 養老鍋を食す
白川べりの農家から移築されたという築150年を超える京町屋がほっこり出迎えてくれます。
靴を脱いで上がると板の間の廊下から奥の座敷へとつながります。
奥座敷にはちょっと低めの机が1間にいくつか用意されて、あらかじめガスコンロが設置されているスタイルです。
基本、畳に座って食べる様式ですが、「座るのがどうも」という人には掘りごたつの部屋も用意されています。
さて、コラム子も堀炬燵の部屋に案内されました。
炬燵に足を投げ出してほっこりしていると、接客担当のお母さんが見せてくれたお品書きには定番のおそばのメニューがずらりと列記されています
ざるそば(¥900)、とりせいろ(¥900)、おろしそば(¥880)、とりなんば(¥100)、天ざる(¥1600)、にしんそば(¥1300)・・・・
いずれのメニューのお値段もお財布にやさしいので安心できます。
隣の座敷のお客さんの話す声が聞こえてくるので、なんとなく耳を傾けていると注文していたのはにしんそばと天ざるでした。
さて、今回コラム子が注文したのはこの店の名物・養老鍋(¥4200)です。
養老鍋とは、湯葉、生麩、ひろうすといった京都名物の食材に地鶏、エビ、九条ネギなどの京野菜を合わせてさっと炊いて、締めにお蕎麦ときしめんを味わという、うどんすきならぬそばすきのことを指します。
京風の薄味のだしで、京都ならではの食材を炊いて、だしのうまみが極まったところにきしめんとそばを投入して楽しむというもの。
座敷に腰を下ろして庭の景色に見とれていると、お母さんが鍋の具材を運んできてくれました。
一見してこんな感じ。
向かって右から白菜、エビ、九条ネギ、シイタケ、ひろうす、生麩、湯葉、モミジ麩、菊菜、そば、きしめんです。
なお、この鍋の具材には老舗の湯葉半の湯葉、もっちりとした味わいが個性的な麩嘉の生麩、鍋のうまみを引き出すいづ萬のひろうすが使われています。
京名物のオンパレードといったところですね。
うどんすきと同じ要領で最初に具材を食べていきます。
取り皿に具材を引き上げてレモンと七味でいただくのですが、上品な京風のだしがまろやかで口内に染みわたります。
中でも、コラム子が感心したのはひろうすとだしの相性の良さでした。
この取り合わせには敬服した、の一言に尽きます。
取り皿に入っているひろうす
最後にきしめんとおそばを投入します。
このお店のお蕎麦はなぜか白っぽいのが特徴。
そばときしめん
信州そばとは一味違う、京風のどちらかと言えばのど越しの良いつるつるした舌触りの食感ですが、これがまた鍋のだしの味によく合います。
コラム子が訪問したのはまだまだ暑い日でしたが、ふうふういいながら食べる養老鍋は格別でした。
隣の座敷で食べているお客さんは、天ざるやにしんそばを食べている人が多かったのですが、暑くても少々お高くても、こちらのお店に来たからにはぜひ名物の養老鍋を注文されることをお勧めします。
決して期待を裏切りません。
ご主人とお母さんに聞くお店の秘話
お鍋を食べ終わってから、ご主人とお母さんにいろいろお話を伺いました。
店のご主人
最初に4代目のご主人に聞きました。
「うちの店の創業は明治43年ですけど、長いこと製麵をしてました。蕎麦屋になったんは昭和37年です。看板メニューの養老鍋はその時からやってます。2代目のうちのおじいさんが料理組合を通していろいろな料理人にそばに合う鍋のだしとか具材のことを相談して、この鍋が出来たんですわ。」
「そばの特徴ですか?特にあらしまへんけど。うちの麵は創業の時分から機械製麵ですしね。」
「養老鍋の味が引き立つようなおそばにされてるんですか?」
「いや、養老鍋だけを意識してそばを作ったりしたことはないですね。」
「僕は4代目ですわ。来てくれはるお客さんが値段が安いてよう褒めてくれはるんですけど、うちはあくまでも家族経営の店でして・・・まあ、家族が何とか食べていけたらええかな、くらいの気持ちで店やってます。あんまり値上げする気はありません。」
切り盛りを任されているお母さん
次にお客のお世話を担当しているお母さんに話しをお聞きします。
「うちが蕎麦屋を始めたんは、息子がさっきいうたように昭和37年からです。それまでここは私ら家族が生活してたんですわ。この家で。この住まいはもともと白川べりの農家から移築したもんです。築150年余りになります。庭が風情あるて、みなさんゆうてくれはるんやけど、ただの住まいやったいうだけで、普通に手入れしてただけのことです。高松宮殿下がお越しにならはったんは昭和40年でした。聖護院門跡をお訪ねになった折、うちの店でお食事していかはりました。」
高松宮殿下
「黒澤明監督さんや勝新太郎さんなんかもしょっちゅうお越しでしたね。せやけど、うちはあくまでも家族でやってるだけで。来てくれはるお客さんはどこの人が多いかですか?国内やったら関東の方かな。海外からのお客さんはコロナ禍前の方が多かったですね。うちはもともと製麵をしてたんどすわ。江戸時代から続いている河道家から暖簾分けをさせてもろて。蕎麦屋を始めたんはもっとこっちです。養老鍋をやってるんはうちだけです。本家はしてしまへん。せやけど、うちはそばぼうろはさせてもろてしまへんしね。」
お母さんに案内してもらいながらお店の中を見せてもらいました。
坪庭、入り口の石畳、座敷からの庭の眺め。
どれをとっても非常に古式ゆかしい、由緒ある町家の佇まいにほっこり心がほどけていく感がします。
坪庭
座敷から庭を眺める
入口の石畳
むすび
このお店は京都をあまり知らない人に紹介するにはもってこいと言えそうです。
喧騒から離れた立地といい、一般的な京都のイメージを体現化したといえる趣のある外観と言い、各座敷のしつらえと言い。
そのうえ、なんといっても今どき珍しい庶民派のお値段がありがたいですね。
コラム子自身、このお店はドイツやオーストリアの友人が京都を訪れた際に、何度も彼らを案内した経験があります。
外国人に限らず、大阪であれ、神戸であれ、京都を知らない友人を連れていくには最適であると自信を持ってお勧めできます。
そしてまた、このお店の経営者である4代目ご主人と接客担当のお母さんの人となりに、とても好感の持てるお店でもあります。
さわやかで気持ちよく、かつ親切で笑顔の絶えないお二人が印象的です。
店舗情報
〒606-8391
京都市左京区聖護院西町1の1
河道家養老
電話:075-771-7531
営業時間:11時~19時
定休日:火曜日
予約:特に必要なし。
交通アクセス:市バス 熊野神社前下車 徒歩10分
この記事を書いた人

つばくろ(Tsubakuro)
京都生まれ、京都育ち、生粋の京都人です。
若い頃は京都よりも賑やかな東京や大阪に憧れを抱いていましたが、年を重ねるに従って少しづつ京都の良さが分かってきました。
このサイトでは、一見さんでは見落してしまう京都の食を巡る穴場スポットを紹介します。