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前編:最初に開花せし仏法蓮華

地上極楽の国パドマ。その国に生きる人々の間には宇宙全体、地球そのものを釈迦牟尼仏とみる「大如来蔵浄土」の聖伝が共有されている。そしてその聖伝の第一の基盤をなす教えとして、この世に出現された最初の仏陀であるお釈迦様の教えが共有されているのである。

人々は過去も今も、お釈迦様の説かれた教えを大切に守って日々の生活を営んでいた。まずはこの教えが、人と人をつなぐ縄として存在しているのだ。

全宇宙の中心に坐し、すべての私たちを見守って下さっている偉大なる仏陀、お釈迦様。この地球はそのお釈迦様の身体であり、その大地は仏様の大地である。

お釈迦様

まだ大地がさら地で何もなかったころのこと。ある時そこに肉体を持った人間としてのお釈迦様が出現された。お釈迦様はこの大地の上に人々を救うための仏法の華の種を植えて大地を耕し水をやり、六年間の苦行の末に見事に華を咲かせたのである。

その教えは四聖諦と呼ばれ、多くの人々の間で共有されている。

1.この世の苦しみ(苦聖諦)

苦しみの中を生きる母と子のイメージ

現実世界は無常であるが故に多くの苦しみがある。

・生まれ落ち、老いて、様々な病にかかり、やがては死んでしまうという苦しみ。

・愛別離苦:愛する者と必ず別れなければならないという苦しみ。

・怨憎会苦:恨み憎む者と出会わなければならないという苦しみ。

・求不得苦:欲しいもの、求めるものが得られないという苦しみ。

・五蘊盛苦:感覚的な執着から離れられない私たちそのものが苦しみの存在である。

2.では、なぜ私たちは苦しむのか(集聖諦)

苦しむ人

すべての苦しみの根源、それは自己への執着心にある。
人やモノ、特定の思想への執着心、そして自分こそが正しいのだという慢心。

これらはすべて、自分自身への執着心をもととするものなのだ。
そしてその執着が生み出すものが煩悩なのである。

煩悩、それは私たちを煩わし、悩まし、かき乱す精神作用である。この煩悩に操られ、私達は誤った行動をしてしまう。そしてそこから、実に様々な苦しみが生み出されてしまうのだ。

3.よって、執着を滅すことで苦しみはなくなるのである。(滅聖諦)

黄金に輝く(安楽になる)イメージ

4. 苦の消滅に到るには、八つの正しい道を歩めばよい。(道聖諦)

正しい道

①正しい見解:正しく四聖諦の道理(正しい筋道)を見ること。
②正しい考え:正しく四聖諦の道理を思惟すること。
③正しい言葉:うそ偽り、そしる言葉、荒々しい言葉等を言わないこと等。
④正しい行い:殺生、盗み、欲深き金儲け、淫らな行為をしないこと等。
⑤正しい生活:②~④を統合したもの。

⑥正しい努力:ひたむきにその道につとめ励むこと。
⑦正しい思い:正精進の意識的な方面で、正しい見解を常に心に留めて忘れないこと。
⑧正しい瞑想:専ら一つのことに集中して取り組むこと等。

この四聖諦の教えを胸に道を歩んでゆけば、いつの日か必ず苦悩から解き放たれた安楽の境地にたどり着くことができる。これがすなわち、仏の道である。

お釈迦様はかつて、このように説かれたのである。
すべての苦しみ生きるわれらが、安楽の今を生きてゆくことができることを願って。

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お釈迦様は他にも、人々を救うために様々な教えを説いて回った。
有名なものに、非我(我に非ず)の教えがある。

人間とは何か。それは次の五つの要素が仮に集まってできた存在である。

色:様々な物や人から
受:何かを感じて受けとり、
想:頭の中で様々なことを想像し、
行:こうしよう、と行動する。
識:何かがそこにあると認識する。

しかしそのどれをとってみても、〈これが私である〉というものは存在しない。こうして見ると、私たち人間は基本、感覚的な欲望に基づいて行動する存在なのであることに気づく。

このようにして、本来的に〈これが私である〉というものは実はどこにも存在していないということを自覚し、自己への執着心を離れてゆく。

人間を構成する五つの構成要素のどれをとってみても、〈これらはみな我に非ず〉と。

しかしながら、仏陀は非我を説きながらこうも述べているのだ。

お釈迦様

「自分自身が、自分の拠り所(あるいは避難所)である」「自分自身と仏陀の教えを拠り所とし、他の誰にも、他の何ものにも頼ってはならない」と。

〈我に非ず〉と見ても、〈私自身〉は肉体を持って間違いなく今そこにいる。この場合の〈私〉とは、仏陀の教えを受け入れてその道を歩む自分自身のことである。大切なのは、この自分自身を拠り所として自立して道を歩むことなのだ。

〈非我の教え〉、そこには感覚的な自己の欲望に基づく生き方から、
仏陀の教えを守って道を歩む生き方への転換があるといっていいだろう。

「中編:仏陀の教えを守って生きる その1」へつづく。

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