第1楽章 漆黒の闇の淵から―名もなき者の命の叫び― 後編
投稿日:2022年12月05日投稿者:じゅうべい(Jubei)
カテゴリー:第9遊行 闇よりの目覚め―俺たちに明日はない?― , 平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
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後編:名もなきものの、いのちの叫び
俺たちに救いはない。
俺たちに明日なんて、ないんだ。
いつかどこかで聞いたことがある。この世には、苦しみに満ちた世界を生きる俺たちを救う、仏や菩薩なんてものがいるらしいことを。だが、俺はそんなものは信じない。信じたこともない。信じるはずもない。俺は生まれてこのかた、そんな奴らに会ったことなど一度たりともないからだ。仏や菩薩なんて奴らは、しょせん財のある奴ばかりに目を向けて、下層社会で苦しむ俺たちには見向きもしてくれないではないか。
こんなふざけた話があるか?よく考えてみろ。
財力も何もない俺たちに、そんなことがどうやってできると思っている。
その日暮らしがやっとの俺たちに、そんなことがどうやってできると思っている。
本当に苦しんでいるのは、そこに生きるすべての俺たちだというのに。
なのにそんな俺たちには手一切を差し伸べず、一人残らず死ねというのか。
一人残らず地獄に堕ちろというのか。
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ふざけるなよ、この偽善者どもが!
結局はそうだろう。そういうことなのだろう。
何もない俺たちは、この世で苦しみ悶えるか、こうして死んでいくしかないのだ。
・・・・・薄れゆく意識の中、俺はゆっくりと最期のその時を待った。
ああ・・・・・。
ここで死ねば俺は地獄に堕とされて、そこで永い間責苦を受けることになるだろう。どうしようもない罪を重ね続けたこの俺に、どうしようもなく汚れてしまったこの俺に、穢れまみれのこの俺に・・・・・、
救いなど、あるはずがないのだからな。
俺は闇の中で、自分の身体が、魂がさらなる闇へと引きずりこまれていくのを感じていた。
俺たちには救いなどない。いや、もう永遠になくてもいい・・・・・・。
そしてゆっくりと、俺は虚無の闇に沈んでゆく。静かなる哀しみと、この世に生きることに対する絶望とともに。
「第1楽章」(完)
この記事を書いた人
じゅうべい(Jubei)
みなさんこんにちは。今日も元気がとまらない地球人、じゅうべいです。好きなことは遊ぶこと(漫画に映画、音楽(Jロック等)にカフェ巡り)です。
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