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「なむあみだぶつ なむあみだぶつ」
時は永保二年(一〇八二)二月十五日。その日も永観は阿弥陀堂で念仏行道をしていました。夜を撤した行もそろそろ終わりに近づいていましたが、夜明けにはもう少し時間があります。凍てついた堂内では、時おり、蠟燭のほかげが永観の姿を映し出しています。
ふと、何かの気配。思わず息をのみます。壇から降りて前を歩かれているのは、ご本尊の阿弥陀如来だったのです。そして、すっと首を左にひねって永観を見られました。

「永観、遅し」

みかえり阿弥陀立像。

阿弥陀如来さまはそう言って、永観を先導したのでした。永観堂のご本尊である阿弥陀如来さまは、世界でも珍しい『みかえり阿弥陀』と呼ばれています。そこには、さまざまな思いや願いが込められているのだとか。

・おくれる者たちを待つ姿勢。
・自らの位置をかえりみる姿勢。
・愛や情けをかける姿勢。
・思いやり深く周囲を見つめる姿勢など。

このようなこころが、みかえり阿弥陀さまにはあるのだといいます。

永観堂の正式名称は「聖衆来迎山 無量寿院禅林寺」といいます。平安時代の初期、八五三年に、空海の弟子真紹が創建したことに始まります。そして八六三年、清和天皇から勅額をたまわり、「禅林寺」と名付けられたのでした。永観堂の名の由来は、この寺の七代目住職である永観律師に由来しています。恵まれない人々のために力を尽くした永観は、広く人々に慕われます。そうしていつしか「永観堂」と呼ばれるようになっていったのでした。

永観堂といえば紅葉の名所として知られ、秋になるとそれはもう壮大な紅葉の景色がご覧いただけます。

放生池。

方放池

しかし実は、新緑の季節である五月なども負けず劣らず美しい景色が楽しめるのですね。池の中を鯉が泳ぎ、樹々の彩りの変化を映す水面がとても美しいです。

方放池前の景色。

方放池前の景色

池の上にある弁天島には水の神様である弁財天が祀られています。弁財天はもともとインドの女神さまでして、言語・音楽・学芸の神様として知られています。中世には七福神の一つとして信仰を集め、江戸時代には蓄財の神様として信仰が深まりました。

阿弥陀堂へと続く道。

阿弥陀堂へとつづく道

阿弥陀堂。

阿弥陀堂

念仏信仰の道場というだけありまして、静かな時が流れております。阿弥陀堂には『みかえり阿弥陀』として知られるご本尊、阿弥陀如来立像が安置されております。

みかえり阿弥陀立像。

平安後期~鎌倉前期に製作。

体は、正面に向けて来迎印を結び、左肩を少し落として左に振り返り(みかえり)、後ろ側の床方向に視線を落とす、全国でもめずらしい姿の立像です。永保二年(一〇八二)二月十五日に、念仏行道をしておられた永観律師の前を歩いて、「永観、遅し」と励まされたという奇瑞が伝えられています。みかえり阿弥陀さまの像は、その時のものといわれているのですね。

永観堂は観光地というよりも、念仏道場としての信仰の場と呼ぶ方が相応しいと思いました。みなさんも本堂の『みかえり阿弥陀さま』に触れて、静けさの中でゆっくり思いを馳せてみてはどうでしょうか。
おくれる者たちを待つ姿勢。自らの位置をかえりみる姿勢。愛や情けをかける姿勢。思いやり深く周囲を見つめる姿勢。その思いと願いに触れることで、きっと自らの中で何かが見えてくることでしょう。

参考文献

鬼頭誠英(監修)伊達文子(原稿)『永観堂ものがたり』(総本山 永観堂禅林寺、2009年)。
『総本山 永観堂禅林寺のパンフレット』。

永観堂禅林寺

  • 住所:京都市左京区永観堂町48
  • 電話番号:075-761-0007
  • URL: https://www.eikando.or.jp/
  • X:https://x.com/hashtag/永観堂?src=hashtag_click
  • 拝観時間:9:00~17:00(受付終了16:00)
  • 拝観料1,000円。障害者割引600円。
  • アクセス
    市バス「南禅寺・永観堂道」下車徒歩約3分。
    地下鉄東西線「蹴上駅」下車徒歩約15分。

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