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善きかな、善きかな、絶景かな。

比叡山延暦寺の根本中堂。

比叡山根本中堂

この日、齢123歳の誕生日を迎えたわしは、自らの生誕123周年記念の誕プレ(誕生日プレゼント)として久方ぶ~りんに天台宗の総本山、比叡山延暦寺に足を運んでいた。なぜかって?なんとなくじゃ。理由などいらん。

延暦7年(788)に最澄さんが平安京の北東(丑寅)の比叡山に〈一乗止観院〉(いちじょうしかんいん)を建てたことに始まるお寺、延暦寺。その中心である根本中堂には建立当初から本尊として薬師如来様が安置されておる。薬師如来様は今日もここから多くの人々を見護っておられるのであろう。

薬師如来。

このお寺は、建立から1200年以上経った今もなおここに鎮座して、
人々を、そして京都を守り続けておるのだ。

そう思うと感慨もひとしおというものじゃのう。

そういえば・・・・と、わしはあることをふと思い出した。


延暦寺。このお寺は、いわゆる魔(=魑魅魍魎〈ちみもうりょう〉)の集まりやすい「鬼門」の方角に建てられている。最澄さんは「鬼門」を封じることで、都に災厄をもたらす魔が入ってこないようにしたんじゃったな。

時は794年。桓武天皇はこの年に都を平安京に遷したんじゃが、

桓武天皇

その平安遷都においてもっともこだわったのが「鬼門封じ」じゃった。

平安京の北東(丑寅)。この方角は古代中国では魔の集まりやすい「鬼門」と呼ばれておっての。陰陽道では陰悪の気が集まり、百鬼の出入りする門として、万事にこの方角を忌んだというわけじゃ。そのため、鬼門の方角には神社やお寺を建てて、神仏の力で魔(=魑魅魍魎)が都に侵入してこないようにしたんじゃよ。そしてその代表的なものの一つが比叡山延暦寺だったというわけじゃ。

魑魅魍魎(ちみもうりょう)。

魑魅魍魎

これは日本では奈良時代以降、人に災厄をもたらす見えない存在、物の怪として多くの文献に登場する。


・魑魅は、山のしょう気から生じる人面鬼身の鬼の一種で、人に害をなす物の怪のこと。
・魍魎は山、川、木、石など、自然物の精気から生じる精霊のことで、赤い目、長い耳と美しい髪、人に似た声をもつ。人を化かし、死者を食べるという。

〈魑魅魍魎〉は四文字すべてに鬼に関連した文字があてられているが、これは〈鬼〉だけを指すのではなく、〈災厄をもたらす物の怪全般のこと〉をいうといわれておる。

都の人々は予期しようのない天災や病気を、鬼、精霊、荒魂(あらたま)など、可視できないもの=物の怪のしわざと考えた。そしてその存在をすごく恐れていたというわけじゃ。

怨霊の嵐のイラスト

存在のはっきりしない、得体のしれない妖怪や魔物、災厄や病など。これらを、人々は恐れを込めてまとめて物の怪と呼んだのだわけなのじゃよ。

最澄さんは魔の集まりやすい鬼門の方角に延暦寺を創建し鎮座させることで、魑魅魍魎(ちみもうりょう)=物の怪を封じ込めて都に災厄をもたらす魔から都を守ろうとしたのだといわれておる。

最澄さんの画像

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そういえば・・・・と、わしはまたあることを思い出した。魔から都を守る延暦寺について、こんな話があったな。
それは、たとえば承和年間(834~848)を通して、平安京を囲むように置かれた延暦寺を含む七高山(しちこうさん=近畿地方にある7つの高山)のお寺等で、病をもたらすとされる疫神(えきじん)から都を守るために薬師悔過(やくしけか)という仏教儀礼が頻繁に行われていたという史実があることじゃ。


・薬師悔過とは薬師如来様に身体・言葉・心のはたらきにおける悪業の罪を懺悔(ざんげ)し、それらの罪を滅する儀礼。
・懺悔とは、自ら犯した罪を仏様の前で告白して忍容(認め許すこと)を乞うことじゃ。

そしてこの時期の薬師悔過の典型的な内容は、こんなものじゃとされておる。


国家(天皇)に選ばれた浄行の僧が三日の間、昼は『金剛般若経』を転読し、夜は薬師悔過を修する。その間は殺生を禁断し、疫病のあるところでは国境において「攘祭(じょうさい)」(疫神を払う祭り)が行われる。

「この世に存在するあらゆるものは、様々な条件と原因が重なりに重なって仮にそこに存在しているものである。よってあらゆるものはもともとは固定的な実体を持たず、存在もしないものである」。この般若(空〈くう〉)の呪力によって疫病を鎮圧し、

般若経を転読する行者に「滅罪」をもたらすために、
薬師如来様に罪を懺悔する悔過を行う。

薬師如来。


そして薬師如来様はその大悲(苦しみ呻く者に対して、心から手を差し伸べる)ゆえに悔過する行者の懺悔を摂受し、それによって滅罪が果たされる。

これら〈善い結果をもたらすもととなる行い〉によって、
疫神の平安京への侵入は防がれ、災いは防がれる、というわけじゃ。

・・・・なんとも深い話よのう。
と、思いを馳せながら、わしは再び根本中堂に目を向ける。

比叡山延暦寺の根本中堂。
歴史を知ると、そこには実に深い叡智があることを知る。延暦寺の場合、ただのお寺だと思っていたものが、深い叡智が加わることによって、自分の中でより深みと重みを増した存在として生まれ変わる。こうして今日も、わしは延暦寺と鬼門の歴史を通して新しい〈人の生き方〉と出遇うことができたのであった。

参考文献

『国宝と歴史の旅 (3) 神護寺 薬師如来像の世界(朝日百科日本の国宝別冊) 』(1999年、朝日新聞社)。
『岩波仏教辞典 第二版』「延暦寺」「鬼門」・「悔過」・「懺悔」の頁(2002年、岩波書店)。
長岡龍作「悔過と仏像―悔過儀礼における仏像の役割―」(奈良国立博物館研究紀要 :『鹿苑雑集8号』2006年)。
『京都魔界地図帖 ~地図と写真でたどる京都裏歴史ロマンの旅 』(〈別冊宝島 2356〉2015年)。

比叡山延暦寺

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    無料:東塔駐車場(第一駐車場)
    乗用車:270台(身障者用駐車スペース5台)
    大型バス:70台
    根本中堂・大講堂のご参拝に便利です。ご参拝のお帰りに延暦寺バスセンター売店でお土産をお買い求めいただけます。

    無料:西塔駐車場
    乗用車:75台(身障者用駐車スペース2台)
    大型バス:20台
    釈迦堂・弁慶のにない堂・浄土院のご参拝に便利です。

    無料:峰道駐車場
    乗用車:50台(身障者用駐車スペース3台)
    大型バス:15台
    比叡山峰道レストランでのお食事・喫茶に便利です。青龍寺参拝の最寄り駐車場になります。

    無料:横川駐車場
    乗用車:80台(身障者用駐車スペース2台)
    大型バス:10台
    横川中堂・元三大師堂のご参拝に便利です。

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