第3楽章 阿弥陀仏様の子守唄―後編―
投稿日:2022年03月07日投稿者:じゅうべい(Jubei)
カテゴリー:第5遊行 羅城門・阿弥陀物語―温かく、やさしく、穏やかに― , 平安仏教聖伝―阿弥陀聖(ひじり)空也編―
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後編:阿弥陀仏様の子守唄
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
私、空也はレンを抱きしめながら、レンの頭を撫でながら、口に任せて阿弥陀念仏を称え始めていた。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀念仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀念仏」
「それ、なあに」
レンが顔を上げて私に聞いてくる。
「これはね、お守りの言葉だよ。南無阿弥陀仏、こう称えると、阿弥陀仏様が私と、レンと、小太郎と、そしておねえちゃんを守ってくれる」
「ほんと?」
私はもう一度、口に任せて南無阿弥陀仏と称えてみせた。
「今もここにいてくれてるの?」
「ああ、ずっといてくれているよ」
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
「だから、安心をし。阿弥陀様はずっとここにいてくださっているから」
私はレンの身体を包み込み、その背中をやさしくさすってやった。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
私は口に任せてゆっくりと、阿弥陀念仏を称え続ける。まるで子守唄のように、やさしく、ゆっくりと、穏やかに。幼いこの子の背中をさすりながら。そして時に、掌でポン、ポンとやさしく背中をたたきながら。私は念仏を称え続ける。
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「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
さあ、もう大丈夫だよ。阿弥陀仏様はここにいる。ずっとここにいてくれる。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
だから、安心していいよ。もう怖いものはどこにもない。もう痛いものもどこにもない。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
阿弥陀仏様は守ってくれる。きっと君を、そして君たち守ってくれる。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
だから、もう大丈夫だよ。もう安心していいんだよ。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
・・・・・すぅ・・・・・すぅ・・・・・すぅ・・・・・。
・・・・・しばらくすると、レンは小さい寝息をたてて、私の胸の中で眠っていた。呼吸によって、レンの温かく、小さな背中が手の中でゆっくりと前後している。その表情は、穏やかで、柔らかで、可愛くて、心からの安心感があった。
よしよし。どうかゆっくりおやすみよ。
安心していい。私がここにいてあげるから。
私は小さいその子を抱いて、口に任せて称え続ける。
「南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。南無阿弥陀仏、阿弥陀仏。」
私がここに、いてあげるから。
第5遊行 羅城門・阿弥陀物語―温かく、やさしく、穏やかに― (完)
この記事を書いた人
じゅうべい(Jubei)
みなさんこんにちは。今日も元気がとまらない地球人、じゅうべいです。好きなことは遊ぶこと(漫画に映画、音楽(Jロック等)にカフェ巡り)です。
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