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ぬお~~~!ちっくしょ~~~~!!

と、わち(わたし)はその時、狂ったように叫んでわめいて大・大・大号泣していた。宇治平等院の宝蔵の中で絶叫号泣悔し泣き、きたならしい鼻水と滂沱の涙で顔面という顔面を濡らしに濡らしながら。わちはとにかく泣きわめいていた。

阿鼻叫喚・大叫喚・大大大叫喚!ちっくしょ~~~~!

「うるっさいな~~~」

ガキのようになさけなくバカの鼻たれ小僧みたいに泣きじゃくるわち。それを見かねて、あまりのうるささについにブチギレたものがいた。

「あの鬼、さっきからなにを泣いとるんじゃ」

ブチギレたのは宇治の宝蔵を守っているといわれる龍神様だ。この龍神様、普段は宇治川に住んで毎夜丑の刻に河の中から現れ、宝蔵を巡検するといわれている。はずなのだが、わちの大号泣の音聲(おんじょう)があまりにうるさかったため、丑の刻を待たず水中から顔を出して鬼の如くわちを恫喝してきたのだった。

龍

「おい、うるさいぞ~!黙らないかこのバカ鬼」

「まったくうるさくてかなわんわい。泣いているわけをさっさと話せ。わしが全部聞いてやるから」
「ほんとう!?ほんとにほんとだね!?」わちは龍神様に聞いた。
「ああもう、やかましい。聞いてやるから早く話せ」
というわけで、わちは龍神様に事の真相を話し出したのであった。

龍神様、どうか聞いておくんなまし。実はわち、かつて京の都平安京の北西にある大江山に居を構えていた鬼なのであります。お酒がだ~い好きのこともあって、家来たちはわちをこう呼んでおりました。

酒呑童子

酒呑童子の画像1

そのころのわちは、見ての通りこんな恐ろしい姿で多くの人を震え上がらせていたんですな。当時一条天皇(在位986~1011年)が治めていた時代の平安京は、栄えてはいても安定した生活を享受できたのは一握りの摂関貴族だけ。庶民の暮らしはまあひどいもんでさ。貧しく荒廃して、不安や恐怖が世の中を覆っていたのでありますよ。

だからわちも、そんな世の中で王権に逆らうモノ(鬼)として、都から姫を次々にさらうなど暴虐の限りを尽くして尽くして尽くしまくっていたので、あります!

酒呑童子の画像2

は~はっはっは!暴虐王、酒呑童子とはそれすなわちのことじゃい。

こんな調子でボーギャック(暴虐)の限りを尽くしていたわち。しかし、いま思えばそれがいけなかった。それが原因でわちは朝廷にその存在を知られることになってしまい、挙句に源頼光という武士に大江山の〈鬼隠しの里〉にまで踏み込まれ、見事に討ち取られてしまったのだから。

あれは油断した。だからいけなかった。

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藤原摂関家と結んで権勢を振るった武士、源頼光。奴は四人の武士(そいつらは頼光四天王などと呼ばれておったぞな)を引き連れ、山伏姿でわちの本拠地、かくれ里の鬼が城に来たわけだが、その時「自分たちも仲間だ」と偽ってわちと酒を酌み交わしたのだ。それに何の疑いも持たずわちは奴らと酒を酌み交わし、まんまと酔いつぶれて寝てしまった。

奴らがわちに勧めてきた美味い酒。実はこれは全然美味い酒ではなく、わちにとっては猛毒中の猛毒の酒に他ならなかったのだ。

その名も、「神変鬼毒酒」(じんぺんきどくしゅ)。
あ~~、思い出すだけで腹が立つ!

聞いてくれよ。ひどいんだぜこの酒は。なぜかってこの酒、頼光ら一行が飲めばそれこそ強い力を与えてくれるが、鬼であるわちが飲めばたちどころに毒に変わるんだからな。ひどいよ、ひどすぎるよ(話によると、この酒は住吉明神、石清水八幡宮、熊野権現の神々が翁の姿で頼光一行に授けたものらしい。よけいなことをしやがって、あのクソジジイども)。

そんなわけで、こんなひどい酒を飲まされたわちはまんまと酔いつぶれてしまい、寝室で寝ていたところを頼光一行に容赦なく叩きのめされてしまったのだった。

「酒吞童子、貴様の悪行これまでだ!」
成敗!!

斬る

討ち首!!

斬撃!

鬼王、討ち取ったり!!

そうして首を斬られたわちは、それでも抵抗して首ひとつで頼光に襲いかかっていった。

酒呑童子の首。

その頭頂部めがけて襲いかかり、自前の鋭い牙で奴の頭をガジガジしてぶっ殺してやろうと思ったが、まるでダメだった。奴はとっさに、連れの渡辺綱と坂田金時の兜を自分の兜に重ね、三重の兜にしていたのだ。そんな兜をガジガジしている間にわちは刀で両の目をくり抜かれ、ついにおっ死(ち)んでしまったのだった。

そしてその後、わちの首は、王権の「内部の中心」である宇治平等院の宝蔵に納められ、今ここにいるというわけなのだよ。

何も言わずじっとわちの話を聞いていた龍神様は、最後に一言、こう仰せられた。
「ふむ、源頼光もよくやったものよ。では酒呑童子、これからはそちのその強大な力、王権を護るために存分に使わせてもらおうか」

おわり

参考文献

小松和彦「酒呑童子の首―中世王権説話にみる「外部」の象徴化―」(小松和彦『酒呑童子の首』1997年、株式会社せりか房。のち小松和彦『鬼と日本人』2018年、株式会社KADOKAWAに再録)。
『京都魔界地図帖 ~地図と写真でたどる京都裏歴史ロマンの旅 (別冊宝島 2356)』(2015年、宝島社)。
高橋昌明「竜宮城の酒呑童子」(高橋昌明『定本 酒呑童子の誕生―もう一つの日本文化―』〈第3章〉。2020年、岩波書店)。

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