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はじめに

京の代表的なわらべうたていうたら、東西の通りを北から順番に歌うていく「丸竹夷(まるたけえびす)」が有名ですやろ?
「通りの名前を覚えるのに便利や」とかいうことで、よそさんの間でもよう知られているみたいや。
そやけど、生粋の京都人のコラム子が「ほんまに京都らしいわらべうたやわあ~」と感心するのは「丸竹夷」やおへんのえ。
今から紹介するとっておきの京わらべうた2つ、「いちびるな」と「ほっちっち」。
ご存じのお人、どれくらいいてはりますやろか?
「いちびるな」(京わらべうた)
いちびるな
にびるな
しょうもないこと
ごべごべと
ろくでもないこと
しちびるな
はったろか
くそぼうず
とんでいけ
どうどす?
「お見事!」ていいとうなるくらい戦闘的な悪口のオンパレードどっしゃろ?
京ことばていうたら、「上品で柔らこうておっとりした」なんていうイメージを持ったはるお人が多いかもしれませんけどな、ほんまはそうでもあらしまへんのえ。
ほな、このわらべうたの中の分かりにくい京ことばを、よそさんのためにコラム子が翻訳してみまひょ。
「いちびるな」ていうのは「調子に乗ってでしゃばるな」という意味やね。
「いちびる」いうのは関西のことばで「調子に乗る」とか「でしゃばってはしゃぐ」ことをいけずな目線でいい表したもんでっせ。
「にびるな」は「いちびるな」の「いち」にかけたもんやなあ。大した意味はおへん。まあ、単なる語呂合わせですやろ。
「しょうもないこと」はきっと「さん」と「し」の数字の音をそのまま映しているんやね。
「ごべごべと」は数字の「ご」からきてるんやろと思うけど、それにしてもまあ、ようこんだけ汚いことばを選んだもんやと、コラム子は感心しますのえ。
「ろくでもないこと」「しちびるな」は、どなたさんでも意味はようお分かりになりますやろ?
そやけど、これも手ひどい悪口どすなあ。―――「いちびるな」をもっとえげつのういうためなんかもしれへんけど「しちびるな」やなんて。
「はったろか」「くそぼうず」「とんでいけ」。―――数字の「はち」と「く」と「とう」が順序よう出てきてますな。
この3つもわかりますやろ?
京都らしい「ぼうず」ていうことばもちゃんと登場してますのや。―――それにしても、やっぱりこのしめくくりもキツイのえ。
気に食わん相手を打ち負かすのに持ってこいのこのわらべうたは、見ての通り「かぞえうた」の形をしてますな。
コラム子が、このわらべうたを教えてもろたんは明治生まれの祖母からどした。
「丸竹夷」やこの後に紹介する「ほっちっち」なんかよりも、もっとリズム感がのうて、ただただ吐き捨てるように歌うんが一番のコツですえ。
ほんまに喧嘩するのにうってつけのわらべうたやねえ。
ほな、次の「ほっちっち」。
「ほっちっち」(京わらべうた)
ほっちっち
かもてなや
おまえの子じゃなし 孫じゃなし
赤の他人じゃ ほっちっち
ほっちっち
かもてなや
おまえの子じゃなし 孫じゃなし
親類になったら かもてんか
さあ、このうたはどうどすやろ?
先のうたよりは、いくらかユーモラスではありますな。
さっきと同様、まずわかりにくい京ことばを翻訳しますと―――
「ほっちっち」は「放っておいて」という意味なんえ。
ほんで、「かもてなや」は「構わんといて」の京ことばえ。
京都の人がとかく気にするのは、ずかずか他人に足を踏み込んでもらうのは困るんや、ということやね。
他人とは適度な距離を保っていたい。―――そうそう簡単には人に心は開きませんのえ。
ハッキリと口には出さへんでも、大抵の京都人はそうやと思うんですわ。
コラム子の祖母も、その娘の母も異口同音にいいましたえ。
「よそはよそ」ほんで「うちはうち」。
このわらべうたの終わりが、「親戚になったら かもてんか」てなってるように、親戚縁者とみなした相手からは「かもうてもろてもかましまへん」ということですな。
それ以外のお人、つまり「赤の他人」には気を許さへん、というのが京都流なんえ、結論をいうと。
このわらべうたも、先のうた同様、コラム子は祖母や母から習うたんやけど、こちらは小さい頃遊び友達とも、よう歌うてた記憶がおすのえ。
多分、洛中の上京界隈ではお馴染みのわらべうたやったんと思うんですわ。
こどものうちに、「よそはよそ」「うちはうち」と割り切っって考える京都らしさが、この歌を通して体にしみこんでいったんやなあ。―――今から思うと。
大阪版「ほっちっち」の場合
面白いことに、この「ほっちっち」には大阪版もありますのや。
どんな歌詞か、ご参考までに紹介しときまひょ。
ほっちっち かもてなや
かもたら とことんかもてんか
おまえの子にして 孫にして
ええ服着せて 養うて
それがいやなら かもてなや
余計なお世話や ほっちっち
どうどす?
京都の「ほっちっち」とはだいぶ違いますやろ?
大阪版は、京都人のコラム子の感想をいうたらただただ「厚かましい~」のひと言につきますなあ~!
ほんまに「ほっちっち」を願うてんのか?―――それとも、逆に構うてほしいのか、とことん面倒見てもらいたいのか、ようわからん。
京都と大阪の気質の違いがはっきり出てて、面白おすなあ。
参考資料
①「京わらべうた」中川正文著 駸々堂出版 1972年発行
②「京都のわらべ唄」梅垣実著 関書院 1947年発行
この記事を書いた人
つばくろ(Tsubakuro)
京都生まれ、京都育ち、生粋の京都人です。
若い頃は京都よりも賑やかな東京や大阪に憧れを抱いていましたが、年を重ねるに従って少しづつ京都の良さが分かってきました。
このサイトでは、一見さんでは見落してしまう京都の食を巡る穴場スポットを紹介します。











