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中編:DAWN OF DREAMS-夢の夜明け―

お父さま・・・・お母さま・・・・・・・。

私、お邑の中で、お父さまとお母さまの幻影が浮かんでは、崩れるように消えてゆく。今はもう、どこにもいなくなってしまった二人を求め、私はずっと生きてきた。

そしてそのたびに、悪夢が私をよびさます。

そう、あれは・・・・あれはあまりにも突然で、あまりにも理不尽な出来事だった。

あの年、あの悪夢のような年、都では流行り病の嵐が吹き荒れ、多くの人がその犠牲となりました。私の父と母もその流行り病に襲われたのです。二人とも重症で一刻も早い治療が必要でした。でも貧しいためにそれも満足にできなかった。それでも私と乳母は、病に苦しむ二人をどうにか助けようと懸命にお世話をしたのです。

お父さま・・・・お母さま・・・・待ってて。私が必ず、必ず助けるから。
だから・・・・だから・・・・・。

お願い、死なないで。

・・・・・でも、でもその甲斐もなく二人は・・・・・・・お父さまとお母さまは・・・・・。

そこまで言うと、お邑は耐えきれずに手で口を押さえ、身体を震わせうつむいて嗚咽を漏らし始める。

私は・・・・私は・・・・・。

なにも・・・・なにもできなかった。

二人を・・・・・救えなかった。

・・・・・お父さま、お母さま・・・・・。

私、お邑はうつむきながら、心の中で何度も何度もその名を叫んでいた。

お願い、お願いだから、目を開けて。

ああ、またやってくる。私の中でまた、あの日のことが・・・・・。

いや・・・・いや・・・・ひとりにしないで。おいていかないで。

お願い、助けて。だれか助けて。

私をひとりに・・・・・しないで・・・・。お願い。

・・・・止まらない・・・・身体の震えが、涙が、痛みが・・・・止まらない。

あの日の記憶が悪霊となって私の中を支配しはじている。また、悪霊が私を・・・・・。

・・・・・なぜ・・・・?・・・・どうして・・・・?

私は苦しみの中で終わらない自問自答を繰り返す。

どうして私はこんな痛みに耐えなければならないの?
私が何をしたっていうの?何もしていないのに、どうして私がこんな目に。

私はただ、お父さまとお母さまと、一緒にいたかっただけ・・・・なのに。

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震えが止まらない。痛みが消えない。悲しみが、消えてくれない。

暗闇

果てのない暗闇がまた、私を覆い包んでいる。

助けて。だれか・・・・助けて。

「・・・じょうぶ・・・・・だいじょうぶ・・・・・」

・・・・え?

「だいじょうぶだよ」

声・・・・が・・・・・・・聞こえる?

「だいじょうぶだから」

だれ・・・・・?

暗闇にいる私に、声をかけて・・・・くれている。誰かが、私に。

・・・・・だれ?

「さあ、落ち着いて、だいじょうぶ、だいじょうぶ」

気がつくと、私はあの日の悪夢の世界から立ち戻っていました。すぐ隣に空也様の顏が見えます。その人が、やさしく、ゆっくりと、私の背中をさすってくれている。やさしく、柔和で、穏やかな表情をたたえながら、私を・・・・・・。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

私、空也は、彼女にやさしく声をかけてあげる。お邑の、震えが止まらない背中をやさしく、ゆっくりとさすりながら、傷ついた彼女の心を、強く、やさしく、抱きしめてあげる。

虹色の光

「だいじょうぶだよ」

あなたの痛みも悲しみも、全部あなたのせいじゃない。
あなたは何も悪くない。何も悪くないんだよ。
だからだいじょうぶ・・・・・・だいじょうぶ・・・・。

「ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・!」

お邑はそう言うやいなや、突然私の胸にすがりついてきた。そして全身に力が入ったかと思った刹那、声をあげて大きく泣いたのである。身体を震わせ全身から滂沱の涙を流しながら。

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい!!」

私、お邑は泣いた。空也様の胸の中で泣き続けた。何度も何度も謝りながら。ただひたすらに叫び続けた。耐えられなかった。愛する人を、親愛なる人を救えなかった自分の無力さが、非力さが。悔しかった。そんな自分がどうしようもなく、憎かった。

ごめんなさい・・・・助けてあげられなくて、守ってあげられなくて・・・・・。
ごめんなさい。

そんなお邑を前にして、私、空也はやさしく抱きしめる。やさしく心を抱きしめて、彼女のすべてを受け止める。

よしよし、だいじょうぶ、だいじょうぶ。

彼女の背中をさすりながら、彼女の頭を撫でながら、私はすべてを受け止める。

あなたは何も悪くない。何も悪くないんだよ。
辛かったね、痛かったね、悲しかったよね。
でも、もういい。もういいんだよ。だからもうこれ以上、自分を責めないで。

癒しの阿弥陀仏様

あなたは何も、悪くないから。

「後編:魂のゆくえ」へとつづく。

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