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晴天の羅城門
「小太郎!」
羅城門の階段を上がった東の隅に、白い大きな犬が座っている。その犬が幼い童女、レンに気づくと、立ちあがって尻尾を振りながら走ってきた。
レンは嬉しそうに駆け寄ると、笑顔で白い犬の頭を撫でてやる。
「ただいま、小太郎」
白犬はすっかりレンに懐いている様子だ。と、白犬が私に気づいた。驚くほど純粋で可愛らしい光をその黒い目に宿している。

大きな白い犬の小太郎

「この人はね、空也さまっていうんだよ。おねえちゃんを助けてくれるの」
ワンッと白犬が吠えたので、私はゆっくりと近づき、小太郎と呼ばれたその犬の頭を撫でてやる。
「そうか、お前は小太郎というのか。私は空也だ。よろしく」
小太郎は嫌がることもなく、気持ちよさげに表情を緩めている。
「空也さま」
レンは私に頷くと羅城門の階段を上がっていく。私は小太郎とともにその後をついていった。
レンに連れられ、白犬、小太郎とともに羅城門の階段を上がると、東の隅に莚を敷いて寝ている女の姿があった。

えらく痩せていて、真っ青な顔色の、影のような若い女だ。薄汚れた莚(むしろ)の切れ端を敷き、その上に寝ている。その女は牛に着せる布のようなボロ着物を着て、腰のあたりに破れ莚を引っかけ、手枕をして寝ているのだった。

あまりにひどいその姿に言葉を失いかけたが、それでもなんとなく、もとはいい素性の者であったことは女の醸し出す雰囲気から伝わってくる。頭の方には汚れた水差しが置いてある。この女とレンは今まで水だけを頼りに生きていたのだろうか。なんにせよ、悲惨なことに変わりはない。

「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
「レン」
女はレンに気がつくと、ボロボロの身体を何とか動かして起き上がろうとした。それを見た私は、ゆっくりと手を添えて女の身体を介抱しながら起き上がるのを手伝ってやる。
「ありがとうございます。あの、あなたは?」
女は私に語りかけてきた。弱ってはいるが、声は意外としっかりしているようだ。
「私は空也と申します。妹さんに頼まれて、あなたを助けに来ました」
「私を、助けに」
「はい。失礼、少しよろしいですか」

私は病で苦しむその女のそばに寄り添い、胸をさぐり額に手を当ててみる。少し熱があるようだが、それほど重病ではなさそうだ。身体にも特に悪いところはない。となると、まずやるべきは・・・・・。

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「空也さま」
ふと見ると、女の前に膝をついているレンが、心配そうに女と私を交互に見ている。
「おねえちゃん、助かるの?」
「うん、大丈夫、なんとかなりそうだ」
私は笑顔で頷いてレンにそう言うと、女に聞いてみた。
「もし、何か食べたいものはないですか?何か欲しいものは?」
すると、女は私にこのように言ってきた。

「欲しいもの、そうですね。ああ、お魚が食べとうございます。それをお菜にして、できましたらご飯も。そしてその後で、お水を頂けましたら」

「お魚にご飯、それにお水ですね」
私は女の目を見て言った。
「わかりました。すぐにご用意しましょう」

とりあえずお魚は東市の権三から頂いた干魚がある。あとは・・・・・・。

と、私は女の傍らに置いてある水差しを手に取った。
「レン」
と、私は水差しからレンの方に目を移す。
「そなた、井戸から水を汲んだことは、あるかい?」
「うん、あるよ。ずっと前に、おねえちゃんといっしょにやったの」
「一人でできそうかい?」
「うん、それもおねえちゃんが教えてくれたよ」
「よし、ではレン、この水差しを持って井戸から水を汲んできておくれ。この近くにあるはずだから。私は市に戻って飯一盛をもらってくる」
「うん」

羅城門から東市までは若干距離があるが、急げば間に合うだろう。レンのために何としてもこの人を助けなければならない。私は東市へと足を急がせるのであった。

「第3楽章 阿弥陀仏様の子守歌」へとつづく。

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