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みなさんこんにちは。暑さもようやく過ぎ去り、季節もようやく秋らしくなってきましたね。気温の落差が激しいので、風邪をひかないように気をつけてください。
さて、本日はですね、みなさんにかの有名な伝説の妖怪についてのお話をお届けします。

伝説の妖怪とはどんな妖怪かというと、こちらの妖怪になります。

玉藻の前。

妖狐 玉藻の前(たまものまえ)。

とはいっても、第三者の私の口から話してもなんだか面白くないので、その妖怪を撃退したご本人に登場してもらいましょう。しかしその人は残念、もうとっくの昔に死んでいますので、降霊術にて現代に黄泉がえってもらいたいと思います。

さあ、お呼びしましょう。わたし史上、最低最悪にしてゴミのような大親友、宇宙最強の霊媒師、大原大五郎(オオハラダイ・ゴロー)さんです!

霊媒師オオハラダイ・ゴローさん。

ハロウえぶりばでぃ~~みなっさ~~ん♪ただいまご紹介にあずかりました。わたしがかの、宇宙最強のエイリアン霊媒師、大原大 五郎でございます。

さて時間もありませんので、では、さっそく。

さあいくぞ!一撃必殺、オオハラ!DIE!ゴロー!

ダイゴロゴロ・ダイゴロゴロ・・・・・ぎゃ~~~~!

ゴローめ、また一旦死んだようだな。さて、みなのもの、ごきげんうるわしゅう。この俺さまがかの伝説の平安妖怪 玉藻前を撃退した男、陰陽師 安倍泰成である。今日はこの俺がそいつと戦ったときの話を聞きたいというこというので、こうしてわざわざ出てきてやったわけさ。

正直言って、話すのはひじょ~~にめんどくさいのだが、貴様らに話したら報酬に三千億円をくれるというから、特別に話してやるとしよう。

さ~~て、たしかあれは平安時代末期、久寿元年(1154)のことだったかなあ。

鳥羽院の御所に一人の美女現る。

玉藻の前。

そう、すべてはここから始まったのさ。その美女は、それはそれはひじょうに才覚にすぐれ、仏法をはじめ何事にも明るいお人であった。ゆえに鳥羽院はその美女を「玉藻の前」(たまものまえ)と名づけて、大切にご寵愛なされていたのだよ。しかしだな、それゆえに、ヒジョーに深刻な問題が起こってしまった。

日が経つにつれ、院の健康がだんだんとすぐれなくなっていったのだ。

うぅむむむ・・・なんだか最近気分が・・・・。

鳥羽院。

ゲッソリー&ゲロゲロ(げっそりして吐きそう)状態じゃ。

この症状は医師の手にあまり、貴族たちは院の苦しみの原因をこの俺さまに占わせた。そして占った結果、この俺は貴族たちこう告げたのだった。

「間違いない。これはあの玉藻の前の仕業だ」

玉藻の前の正体、それは、那須野に棲む丈七尋(十二メートル以上)、尾が九つある中国から渡ってきた妖狐に他ならなかった。その玉藻の前が、院の精気を吸い取っていたのだ。

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そして俺は奴らに次のようにも語った。
「かつて、道に外れた僧にそそのかされた天竺(インド)の天羅国の斑足王が、千人の王の首を供えて塚の神を祀ろうとしたが、般若波羅蜜の力で改心し仏道に帰依した。

妖狐。

そのときの塚の神がこの狐だ。かの妖狐は中国に渡ると、周の幽王の妃となってまずその王の命を奪い、さらには日本に渡ってきて、院に近づき、その命を奪って王法と仏法を破壊し、日本の王になろうとしている」

非常に危険な、とんでもない大妖怪だ。

これを聞いた院をはじめとする御所の人々は、にわかには信じ難かった。だがしかし、この俺、安倍泰成の言う通り、泰山府君(たいざんふくん)の祭り―これは陰陽師が悪霊祓い、延命・出世栄達などの目的でとくに行った祭儀だ―を営み、玉藻前に奉幣の役を務めさせると、案の定、祭文を読んでいる途中で、玉藻の前の姿が忽然と消えてしまったのだ。

この俺さまの占いが間違いではなかったことを知った院は、東国の武士の三浦介と上総介の二人に、那須野の妖狐を退治するよう命じた。

二人は苦心の末にこれを退治し、

2人の武士に倒される妖狐。

その遺骸を都に運んだ。

そして院の叡覧があった後、
遺骸は宇治の平等院の宝蔵に納められたという。

平等院の宝蔵に納められる妖狐。

王権を守るには武力(戦士)と呪力(聖職者)の双方が必要なのであるが、今回の事件では主にこの俺、陰陽師 安倍泰成が泰山府君の祭儀によって王権を守護する物語として語り伝えられている。
王権は、その外側の異界からやってくる妖怪(王権を脅かすものの象徴)を退治したり排除したりすることで、その偉大さを誉め称え、その権力を成り立たせている。ゆえに、現実においても、また説話の上においても、絶えずそうした妖怪を退治・追放することが王権にとって不可欠なことであったのだ。

そして王権の外側支配の及ばない異界からやってきた強力な妖怪を倒すことで、異界をも王権の支配下に入れ、その権力の強大さと正当性を誇示するのである。

ところで、玉藻の前の遺骸は宇治の宝蔵に納められたが、これは、「外部」としての妖狐の遺骸が帝や院の手中に入った時、その王権が超越性を持った「中心」として成立(再構築)されたことを意味しているという。

こうして、王権の危機的状況は見事に乗り越えられ、
その権威は回復したというわけなのだよ。

さてと、以上がこの俺、安倍泰成がかつて経験した妖狐退治だ。

・・・・もうよかろう。さすがにちょっと疲れた。というわけで、もうあの世に還らせてもらう。

では、さらばだ!

参考文献

小松和彦「妖狐の陰謀―『玉藻前草子絵巻』―」(小松和彦『異界と日本人』2015年、角川学芸出版)。
小松和彦「酒呑童子の首―中世王権説話にみる「外部」の象徴化―」(小松和彦『酒呑童子の首』1997年、株式会社せりか房。のち小松和彦『鬼と日本人』2018年、株式会社KADOKAWAに再録)。

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