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後編:それでも俺は、変わりたい

夜空にきらめく星々

「あなたは誰よりも知っている。喪った悲しみを、見捨てられた痛みを。それが・・・・それがどれだけ痛いものか、どれだけ悲しいものかを。誰よりも深く知っている」

いいえ、それだけじゃない。

星空の下、女が俺を抱きしめる力が、少しだけ強くなる。それは強くも、とてもやさしく温かい力を感じさせるものだった。

「それだけではなくあなたは、悪を為した自分の愚かさも、ほかの誰よりも知っている。他の誰よりも自覚している。だから・・・・・」

―必ずまた、やり直せる―

「・・・・どうすればいい?」
忘れていた温かさに包まれて、俺の顔も涙に濡れていた。いや、こんな感覚は、もしかしたら初めてかもしれない。
「どうすれば俺は・・・・・・どうすれば」
それ以上は言葉にできなかった。涙が、嗚咽が止まらなくなったからだ。俺はその時、俺の中のすべてが外に溢れ出る感覚を、身体全体で感じていた。

こんなどうしようもない俺でも、本当に変わることが、やり直すことができるのか?こんなにも穢れしまっているのに。こんなにも血まみれなのに。それでも俺は、やり直せると?立ちあがれると?変われるというのか。

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女は俺を温かく包み込みながら、背中をさすりながら、そして、すすり泣きながら、言葉を続ける。
「大丈夫、どんな時でも私がずっとそばにいます。そしてレンも、あのお方もあなたのそばにいてくれる」
「あのお方?」
「そう、あのお方なら、必ずあなたの力になってくれるはず。私たちを絶望から救い、私たちを変えてくれたあのお方なら、必ず」
女は俺の身体を少しばかり自分の身体から離すと、俺と正面から目を合わせ、両肩をやさしくつかむ。そして俺の涙をその手で拭いてくれた。静かに、やさしく。
「だから大丈夫。あなたはもう、ひとりじゃない」
その目には、やさしさとともに、悲しみや強さ、すべての思いが宿っているようにみえた。
「・・・・どうなるか分からない。ひょっとしたら、またどうしようもないことになるかもしれない。けど・・・・」
俺もその女の目を真っすぐ見つめて、こたえる。
「俺は変わりたい」
女はじっと俺を見ている。
「変わりたい」
俺はもう一度そう口にした。そして・・・・・。
「だから、信じてみる。あんたを・・・・・信じてみるよ」
女は、了解したように一回だけ頷いた。
「俺は・・・・俺の名前は辰巳(たつみ)。あんたは?」
「私はお邑(おゆう)、お邑です」

それが俺と、俺を救ってくれたお邑との出会いだった。

〈第10遊行〉(完)

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