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イノダコーヒ本店の正面

はじめに

師走の某日、早朝6時ちょっと過ぎ。
3年ぶりに中京区堺町三条下がるの「イノダコーヒ本店」に到着。
玄関には見慣れた「只今準備中でございます。午前7時より開店致します。」の立て札があります。

「只今準備中」の立て札

この立て札の「7時開店」が、実は全く形式的なものだということは「イノダ」の常連さんの間では周知の事実になっています。

ちょっと見ると、玄関のドアは固く閉ざされていますが・・・・・

自称「過去の常連さん」の1人であるコラム子は、以前通りドアの隙間に両手を突っ込んで、力任せにむんずと押し広げました。

すると、ドアは音もなく開いて…
結果、何事もなくスムーズに入店できました。

広々とした開放的な1階ホールはまだ照明も点いていないため薄暗いのですが、いつもの常連さんたち約10名あまりは、とっくに“自分のテーブル”に腰を下ろして朝刊に目を通していました。

コラム子も、以前同様9番テーブルに腰を落ち着けます。

本店から見えてくる京都ならではの喫茶文化の神髄とは?

昭和15年(1940年)に開業して、今年(2025年)で85年を迎える歴史あるイノダコーヒですが、現在その店舗は、ここ本店のほかに、三条店、四条支店、ポルタ支店などの京都市内の支店をはじめ、東京、横浜、広島といった地方の支店も合わせると総数は9店舗を数えます。

店舗ごとに個性と特色があり、(例えばビジネス街に位置する四条支店は、フードメニューが充実していて半ばレストラン化しているとか、本店のすぐ近くにある三条店は、バリスタのお手並みが間近に拝見できるカウンター席があって、お客と店員の距離が非常に近いとか)支店に限っていえば甲乙つけがたいところがあります。

しかし、本店の趣きは別格です。

1階ホール

本店に1歩足を踏み入れると誰しも気づくことですが、ここにはいくつもの不文律が存在するのです。
創業以来、店と常連さんが手に手を取って培ってきた“イノダコーヒ本店らしい”独特の不文律が。

その一端をコラム子がご紹介しましょう。

①常連さん以外は座るべからずの“5番テーブル”

コラム冒頭でも少し触れたように、開店時刻を待たずにさっさと自分でドアを開けて入店するのが本店の常連さんのスタイルなのですが、座る席にも暗黙のルールが存在します。
例えば“5番テーブル”。
ここは仮に空いていても、みだりに腰を掛けてはダメ。
知らないで座ろうとすると、他の常連さんから即座に注意されてしまいます。
「ああ、そこは座ったらアカンで。座る人がちゃんと決まってるんや。」

この席を独占しているのは、朝一番の本店に65年以上通い続けている“イノダの主”みたいなSさん。
Sさんは本店のおひざ元に生まれ育った町衆です。
理髪店をしており、長年にわたって歴代のイノダの社長の頭を散髪しているとか。
真っ先に入店して、店に配達された朝刊各紙をホッチキス止めするのを日課にしているらしいです。

コーヒーを1杯飲んでSさんが帰っても、“5番テーブル”には座れません。
Sさんの後を引き継ぐ2番手の常連さんがいるからです。
そのあとも、またその次も。
“5番”が空くといえるのは午前11時から正午までの1時間だけらしい。
午後は午後で別の常連さんの“席”だと決まっているそうです。

“5番テーブル”程厳格ではないにしろ、開店前から座っているいる常連さんには、大抵誰も“これは自分の席や”と「席」について強いこだわりがあります。

②時計なし、音楽なし、電話御法度

創業当時以来、本店には時計も音楽もありません。
これは、「店では日常を忘れてゆったりくつろいでいただきたい。」との初代社長以来受け継がれている方針によるものです。

これと相まってか、店内には公衆電話もありません。
のみならず、携帯電話でべらべらしゃべるお客さんもいません。
店と客の双方でいつしか育まれた、“本店は静かにリラックスする場”という暗黙の了解がここにも見受けられます。

ある時、これを知らない人が携帯で話しだしました。途端に周りからダメ出しがかかったのを、コラム子は見たことがあります。

③コーヒーは原則砂糖、ミルク入り

ホット

 

アイス

 
イノダコーヒで「コーヒー」を注文すると、必ず砂糖ミルク入りで提供されます。
これには訳があって、その昔、本店に文化人が大勢たむろしていた頃、談論風発しがちな彼らは、自分のコーヒーが冷めてしまうのも忘れて議論を戦わせることがしばしばだったとか。
肝心のコーヒーに気がついて砂糖とミルクを入れても、冷めてしまっているのでうまく溶けない・・・・・。―――結果として、「冷めないうちに砂糖とミルクを入れてあげよう。」と店の方が気を利かせて、お客さんに出す最初の時点で砂糖とミルクを入れるようになったのです。

現在では、注文時に「砂糖は要らない。」と店員に伝えておけば、もちろん「抜き」で運んできてくれますが。

④ホテル並みのサービスがモットー

喫茶店でありながらホテル並みのサービスでお客様に接する。
これがイノダコーヒ全店のモットーですが、別けても本店の従業員にはこれが徹底しています。

実際にコラム子が経験した一例をあげてみましょう。
コラム子は、イノダコーヒで出されるお冷が非常に好きで(まろやかで美味しい)、頻繫に足を運んでいた3,4年前の当初、何回もおかわりを注文して
いたのです。
すると、通い出して5回目くらいから何にもいわないうちに、店員が一定の間隔を置いて4~5個のお冷をまとめて運んでくれるようになりました。
 

お冷のグラス

 
しばらくすると、またお冷のグラスをまとめて持ってきてくれ、黙って前のと交換してくれる。
そのタイミングが絶妙で、こちらの好みや希望を実によく察知しているのに常々感心していました。

今回、コラム子は3年ぶりに再訪したのですが、驚いたことに以前と同じタイミングで店員はお冷のおかわりを持ってきてくれました。
びっくりしてそれをいうと、店員の1人は非常に丁寧に「よくご利用いただくお客様のことは、私ども記憶させていただいております。」と答えてくれたではありませんか。

何度か足を運ぶと、その客の好みや癖を全店員が共有して忘れない。―――このさりげないサービスがお客を虜にして離さないのだといえるでしょう。

本店の名物メニュー「京の朝食」

本店には午前7時の開店開始から午前11時まで提供される名物メニューがあります。
それが「京の朝食」(1830円)と銘打たれたプレート、パン、フレッシュジュース、コーヒーのセットです。

京の朝食のプレート

プレートにはローストしたボンレスハム2枚、ふわふわのスクランブルエッグ、カラフルな野菜サラダ(アスパラガス、ミニトマト、グラッセしたニンジン、キュウリ、レタス、千切りキャベツ)とオレンジが乗っています。
ボンレスハムは神奈川県茅ケ崎のハム工房ジローの特製ハムが、惜しげもなく分厚く2枚スライスされており、食べ応え満点です。
ふわふわのスクランブルエッグも優しい口当たりです。

ついてくるクロワッサン

数あるお店のクロワッサンの中でも、イノダコーヒのお味は格別。
特に、開店時にこのメニューを注文すると、出てくるクロワッサンは焼きたてのホカホカ、サクサクでことのほか美味しい。
追加料金を支払ってでもおかわりがしたくなるほど。
(残念ながら、クロワッサンのおかわりはできないそうです。)

フレッシュオレンジジュース

このメニューを頼むと、まず最初に口にするのがこのオレンジジュースです。
甘さは控えめで、とても美味しいけれどいかんせん量が少ないのが残念。

アイスコーヒー

好みにより、ホット、アイスのいずれかを選べます。
豆はイノダコーヒの代表的な「アラビアの真珠」を使用。

「京都の朝はイノダコーヒの香りから」。―――長年に渡って受け継がれてきたキャッチコピーをそのまま具現化したともいえる、この本店限定のメニュー「京の朝食」。
プレートから、パン、ジュース、コーヒーとすべてを目に収めると、その印象はまさにホテル並みの豪華さです。

このメニューを食べたくてわざわざ本店を訪れる人が多いのもうなずけます。

むすび

店と客が一緒に育んだ本店の文化―――イノダが京都を代表する喫茶店なわけ

洛中でよくいわれることばの1つに、「地方からお嫁に来て、近所の人から『あそこのお嫁さんええ人やな。』といわれている間は京都ではまだ認めてもらえてへん。近所で話題にのぼらんようになって初めて、京都では認めてもらえたといえるんや。」というのがあります。
コラム子は、イノダコーヒ、とりわけ本店が、京都で揺るがぬ地位を築いている真の理由はここにあると思います。

このコラムの冒頭で「本店には不文律がある。」と述べましたが、このことばに見られる京都独特の排他性、よくも悪くも「うち」と「そと」にこだわる京都人の気質が本店の絶対的な人気を支えているように思えてなりません。

“この席は自分の席や”というこだわりが周りから受け入れられるのも、例えば電話など、長年の店の雰囲気を壊そうとする者に対して、暗黙のうちに店も客も神経質であるのも、「常連さん」にさりげないサービスを怠らない店員の気配りも。すべて暗黙のうちに了解し合っていること。―――この「イノダ」らしさがあるからこそ、生粋の京の町衆に愛され支持されているのではないかと、コラム子は考えます。

いつの世も京の町衆は黙って「特別」扱いをしたり、自分も黙って「特別」扱いをされたりするのが大好きなんです。
というわけで、今回は「イノダの本店褒め」で終わります。
 

本店紹介

  • 住所:京都市中京区境町三条下ル道祐町140
  • 電話:075-221-0507
  • 営業時間:午前7時~午後18時
  • 席数:  211席
         1階ホール 81席
         メモリアル館 18席
         旧館 37席
         2階 55席
         ガーデン席 20席
  • アクセス:地下鉄烏丸線、東西線「烏丸御池駅」⑤番出口より東へ徒歩10分
         阪急電鉄「烏丸駅」東出入口より北へ徒歩10分
         京阪電鉄「三条駅」北西出入り口より西へ徒歩10分

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